雨上がりの景色を夢見て
「先生もかっこいいんですし、素敵な彼女作ればいいのに…」

「えっ、あっ…まぁ職業柄不規則に忙しくてね。なかなか長続きしないよ」

夏奈さんの言葉にそう言って笑い飛ばす藤永先生だけど、内心きっとドキッとしたのではないかなと思った。

そして、夏奈さんが、藤永先生の気持ちに気がついていないということが、今の言葉から分かり、私は内心ヒヤヒヤしてしまった。

「そうなんですね。もったいないな…先生」

残念そうに、そう呟いた夏奈さんは、コーヒーを全て飲み干して、空になった紙コップをゴミ箱に捨てた。

そんな夏奈さんの後ろ姿を、温かい眼差しで見つめる藤永先生を目にして、藤永先生と夏奈さんがお互いに幸せになればいいのに、と心の底から思った。

ふと、廊下からバタバタと足音が近づいてきた事に気がつき、私は立ち上がって、扉から顔を出した。

「あっ、よかった。中川先生、さっき階段の踊り場で、体調悪くした人見つけて。今、近くに居た3年生が肩貸して連れてきます」

そう言った女子生徒2人は、廊下の奥を振り向いた。

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