「雛、ありがとうね」

菜子を家まで送り届けると、アールグレイの紅茶を母が入れてくれた。

紅茶の香りに包まれて、幸せな気持ちになる。

「明日は夕飯の時に誕生日会をしようと思ってるの。雛、来られる?」

「うん。前から空けておいたから来られるわ」

私の言葉に安堵の表情を浮かべるお母さん。

「今日の夕飯、よかったら食べて行かない?」

「あっ、今日は「雛ちゃん、デートなんだよ!」

えっ

修二くんとの約束があるため、断ろうとしていた私の言葉を、無邪気な菜子の言葉が遮った。

「…デート?」

驚いた様子で、お母さんは私の表情を伺う。

「違うよ。知り合いと飲むだけ」

焦る様子を見せてしまうと、余計な勘違いが生まれると思い、平常心で答える。

「そう…。菜子、今日の分の宿題やってしまいなさい」

お母さんの言葉に、菜子は素直に返事をしてリビングを出た。階段を登る足音が聞こえる。

「お母さんも、座って休んだら?」

「そうね」

私の斜め向かいに座って、同じアールグレイの紅茶を飲む母を見て、なんとなく、さっきの話を気にしているような気がした。