独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
瑠衣の知らない若い女性。ビジネススーツ姿だから彼の同僚なのだろうか。
距離があるので顔ははっきり見えないが、彼女は何か訴えている様子だった。
どこにも行かせないように晴臣の腕を掴み、距離が近い。
その後ふたりは何か話していたけれど、しばらくすると連れ立ってどこかに行ってしまった。
彼らの様子からただの同僚とは思えなかった。
「瑠衣、そっちから測って」
「了解」
那々の指示で忙しく動きながらも、頭の片隅から先ほどの光景が消えてくれない。
(もしかして、あの人が舟木美帆さん?)
そう思いつくと、胸がざわざわと落ち着かなくなった。
(あれは浮気現場だったのかな?)
仕事中かと信じていたけれど、実は違っていてただ待ち合わせをしていただけどか。
やはり声をかけておけばよかったと後悔がこみ上げる。
(いえでも、そうだと決まった訳ではないし)
思い込みで判断して悲観的になるのは駄目だ。
まずは夫から事情を聞かなくては。
思わぬ遭遇をした現場作業を終えると真っ直ぐオフィスに戻った。
その後は自席で内業。司法書士に依頼された資料を集める手続きを行う。
那々は先ほどトータルステーションで測量したデータを確認している。手間どっているようだったので、途中からフォローに入った。
モヤモヤした気持ちのまま夜まで待つのは長いと思っていたけれど、忙しく仕事をしたおかげであっと言う間に帰宅時間になり、残業せずにオフィスを出た。