わがままな純愛 ケイレブとユリア

共同経営の提案


校長先生の別荘は、山の中腹にある。

周囲は雑木林に囲まれて、夜は寂しい所だ。
午後からは陽が陰り、冷気も
足元から立ち上っていく。

ケイレブは大事そうにかごを
抱え、期待と不安で馬車を
降りた。

カーブのある小道を進んで、
目に入ったのは、小さな山荘
だった。

2階建てで、それぞれの窓には
白いレースのカフェカーテンが
かかり、
窓下では赤いベゴニアが、咲き誇っている。

壁の木組みが、意匠を凝らして
美しい。
童話に出て来るような館だ。

ケイレブは
大きく一つ深呼吸して、木組みのドアをノックした。

コンコン

しばらくして、ドアがわずかに
開けられた。

天使だった。

「ケイレブ・・・さん、
なんでここに?」

ケイレブは鼻をかきながら、
早口で言った。
「マギーから、これを届けるように頼まれました。
膝が痛いからって」

ケイレブは、かごを差し出した。
天使はドアを開けて、ケイレブを招き入れた。

「そうですか・・
その、あなたとは、ちゃんと
お話をしなくてはいけないと
思っていました。」

ケイレブは目のやり場に困って、
赤くなった。

天使は、ゆったりとした深紅の
ローブを羽織り、
下は白いレースのネグリジェを着ていた。

ケイレブはかごを片手に下げて、室内に入った。

「お休みの所だったのですね」

天使は、この姿も美しい。
深紅の翼を持つ、天界から降りて来たばかりの天使のようだ。

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