あれから、残念親父と継母と妹は、未成年の侯爵である私を虐待した罪で数年間投獄されることになりました。

 特に、残念親父は私を殴った映像が決定打となり、投獄期間は5年間と、割と長めの期間が定められました。

 継母と妹の牢獄生活は2年間と短めですが、働いたことのない彼女達にとって、お勤め後の生活は苦難を伴うものになるでしょう。


 ところで、私は無事、ナルシストとの婚約を破棄し、莫大な慰謝料をいただきました。
 新聞記事、そしてナルシスト殿下が私に襲いかかる映像記録があったので、王家は、今回の不祥事をもみ消すことも、ギセイシャー侯爵家からの婚約破棄を無視することもできなかったのです。


 ちなみに、ナルシスト第二王子殿下は、婚約破棄を待たずに貴族籍を抜かれ、平民に落とされることになりました。

 侯爵家から王家に対する婚約破棄の成立は、ナイトリー王家を揺るがす大問題です。
 しかし、あの新聞記事を踏まえた上で婚約解消に甘んじるなど、侯爵家の威信に関わります。

 そこで、折衷案として、王族でなくなった第二王子が婚約を破棄され、婚約に関する責任者として王家が賠償金を払ったという体になったのです。


 鮮やかなトカゲの尻尾切りに、私もお祖父様もお祖母様もドン引きでしたが、何はともあれ、無事に婚約破棄できたということで我が家は祝杯を上げました。

「可愛いキャリーの婚約者は、あんな不埒で野蛮な男だったんだな。本当に、婚約を破棄できてよかった」
「本当に、オロカーノは何を見て婚約継続させていたのかしらね」
「うちは王族と婚約なんかしなくてもやっていけるし、婚約するならするで、第二王子に侯爵の配偶者という地位を与える分、恩に着せてもいいくらいだったのだがなぁ」

 何故あんなに図に乗らせたのかと首を傾げながら不思議そうにしている祖父母に、私は安心して微笑みます。

「おや、キャリーは婚約破棄がそんなに嬉しいのかい?」
「それもですが……お祖父様とお祖母様が常識的なお考えをお持ちで、それがとても嬉しいのです」
「常識的?」
「私の周りには、父に義母、妹、昔の使用人、そして元第二王子と、何かと非常識な人間ばかりが集まっていたので」

 私の発言に、祖父母が衝撃を受けたような顔をした後、私をしっかり抱きしめました。

「改めて言われてみると、酷い人間達に囲まれたものだ」
「キャリーがしっかりした子に育って、本当によかったわ」
「お祖父様とお祖母様の孫ですもの」
「まあ、キャリーったら」
「全く、悪い孫に育ってしまったものだ」
「ふふっ」

 そうして、私は祖父母と共に、キャッキャウフフしながら馬車での家路に着いたのでした。

 私の修羅場は、まだ始まったばかりだということも知らずに……。