交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
愛の証と黒い影


吉鷹と想いを告げ合い、心も体も結ばれてから三週間が過ぎた。

あの日以降、彼との生活は砂糖漬けのフルーツのように甘く、連夜と言ってもいいほど愛をたしかめ合っている。

ハワイのチャペルで偽りの愛を誓ったあの日の茉莉花に、こんなにも幸せな結婚生活が待ち受けているとは。責任の名のもとに彼と結婚してからおよそ一カ月、そんな短期間で愛が生まれるなんて想像もしていなかった。


「ヘアスタイルのご希望はございますか?」


茉莉花は、サロンに来店したお客様と挙式当日のヘアメイクについての打ち合わせ中である。

新郎新婦が揃って来店し決める場合もあるが、新婦だけのほうが多い。
その日も新郎は仕事のため、新婦ひとりと横並びに座り、パソコン画面に表示させたいろいろなヘアスタイルを見ていく。


「じつは、こんな感じがいいなっていう画像は選んできたんです」
「そうでしたか。ちょっと見せていただけますか?」


新婦はバッグの中からスマートフォンを取り出し、写真を表示させた。
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