総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
お母さんにそんな事を聞くなんて馬鹿げているとは思ったけれど、それでも聞いてみたくなった。
でも、お母さんは顔を一瞬強ばらせ、私を真っ直ぐに見つめた。
「桜十葉は、まだね……、何も知らなくていいのよ。だから、ちゃんと裕翔くんのそばに居るの。分かった?」
何かを恐れるように。何かを信じるように。
お母さんはいつもとはかけ離れている真剣な顔をして言ったのだ。
私はただ、黙って頷いた。
意味も理由もそんな事、全然分からない。
分からないから、不安になる。
分からないから、怖くなる。
もう、夏休みに入ったというのに私の気持ちは暗いまま。
こんな夏休み、……やだよ。
「よし!今日はお散歩行くついでに買い物して帰ろうか」
そうだった、……。
お母さんは今、妊娠中なのだ。
お母さんのお腹の赤ちゃんはどんどん大きく成長して、今ではお母さんのお腹はふっくりと大きく膨れている。
でも、そんな事さえも忘れていたなんて、私は本当に裕翔くんの事しか頭になかったんだろうな。
「お母さん、体辛くないの?」
「うん。辛くないよ。優太ね、すごく楽しみにしてるのよ。桜十葉もでしょ?」
「ふふっ、うん」
そう言ってお母さんは愛おしそうに、まだ見ぬお腹にいる赤ちゃんを見つめた。
私もそんな様子を見て、心が温かくなった。
「よし、じゃあ行こうか」