たぶんあなたの子です？ 認知して下さい！

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ホッとして、彼女の口元に浮かんだ笑み。
赤ん坊に触れる。優しい細い指。


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しかし、まるで他人事のように。
と秀斗は彼女を見ながら思っていた。
顔もわからず、両思い？

そうでなくとも、恋愛の成就の喜びも、男に対する感情もこもらない声だ。

賢斗と彼女は両思い⋯⋯ 。
笑わせる。

しかし、ここに赤ん坊が確かにいる。
彼女の声には、他人事ではない妙に実感を伴っている。

それからまた泣き出した賢次を抱き上げて、よしよしと愛情深い眼差しであやしはじめる。

チグハグな印象だ。

賢次を見る表情は紛れもなく情にあふれ、守ろうとする強さや責任感を見せるのに、男女の恋愛のもつれや婚外子の現実を微塵も感じさせない。

もう一度彼女は、


「なんだ⋯⋯ 　」


と答えた。

そのまま俯いている。
髪が顔にかかり、表情が見えない。
両思いと分かって、ホッとして、親子3人の明るい未来のスタートを思い描いているのか？

兄が出奔するほど愛して捨てられたという女性がこの人。
しかも不倫だと誤解している。
相手の顔が分からない事を置いておいたとしてもだ。
こんなに恋愛をすっぽりと飛び越して、子供が産まれるか？
『両思い』などと何のつもりで口にしているんだ？

彼女の恋愛はどんなだろう。
もし、抗えない愛情を教え込んだら、彼女はどんな様を見せるのだろう。
オレならこんなあどけない表情で、両思いなんて言わせない。
オレの顔も分からなくなるような、そんな愛し方はしない。
しっかりと自分の顔を見せて、彼女の目にオレを刻んで、見つめ合って⋯⋯ 。

と考え、頭を振った。

兄の想い人なのかもしれないのだ。
その途端湧きあがった気持ちは、何の後悔だか取り返しがつかないような苛立ちだった。


「賢斗が見つかるまで、ここにいればいい」


秀斗が唐突にそう言った。
困って俯いた彼女を見た時から、秀斗はもうそう思っていたのだった。

「金が欲しいのだろう？　いくらでも出してやる。もし、本当に兄の子ならば、オレの血も引く甥だからな」