眠りにつくまで
日々を送る





「おはよう」

起きたらまずカーテンを開け、窓越しに空を見上げて言う。天気に左右されずに行うルーティンワーク。雨の日だって空を見上げて言う。そして一日が始まる。

1年365日、特に変わったことをしないので、このカーテンを開けて‘おはよう’だけがルーティンワークというのではなく、生活そのものが代わり映えしないルーティン生活。そして私は、それに満足し安心している。

でも…あと半年でこのアパートを出なくてはいけない。高校卒業後9年間住んでいる部屋。古いアパートは来年、低層マンションへと建て替えられるそうだ。優先して入居できるとの案内を頂いたが、家賃が倍増するので私には無理だ。そんなに高級仕様にしないでよ…と心の中で毒づくが何の意味もない。この部屋じゃなきゃ、意味はない。この部屋を出るのは嫌だな…出るだけでなく壊されて無くなってしまうなんて。

やっと暑さが過ぎ去り、街はハロウィンや行楽地の宣伝で溢れ、スーパーやデパートには秋の味覚が重なるように並んでいる。それでも私の心は半年後の引っ越しを考えると憂鬱で…不安でたまらないんだ。

パッツンの前髪を整え胸まである髪を念入りにブラッシングしてから、勤務先の高校へ向かった。

幼稚園から大学までの私立一貫校。その高校での事務が私の仕事だ。各家庭からの送迎車が並ぶ横を歩いて校門を抜ける。そして綺麗な校舎の1階事務室の自分のデスクにいつもと同じ時間に着いた。
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