クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜

◇放課後の1年6組

パシャッと水を顔に叩きつけて、タオルで拭う。

顔をあげると、女子トイレの鏡に映るヒドい顔の子。

腕時計は、16時25分を指している。

私が帰りの挨拶もそこそこにトイレの個室に駆け込んでから1時間近く経っていた。


「…帰ろ。」


私は結いていた髪をほどいて顔を隠し、女子トイレを出た。

シ…ンと静まりかえる廊下に、遠くから聞こえる吹奏楽部のラッパの音や、外の野球部の掛け声が滲む。

階段を下ろうと手すりに手をかけた時、ジャージの手提げがないことに気がついて廊下に足を戻した。

教室の前に着くと、また今日の出来事を思い出して鼻の奥がツンとなる。

大きく深呼吸して、電気の消えた教室のドアを開いた。
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