―あすなろの唄―
「もう明日なのね。嬉しいような……淋しいような気もする」

 唄の終わりを告げるような吐息が聞こえて、あたしもやんわりと溜息を零した。

「淋しいなんて……嬉しいよ。でも僕は、明日梛が自由になれるのが一番嬉しい」

「うん……ありがとう。あたしもよ、氷ノ樹」

 見えないお互いの視線がかち合った気がして、あたしははにかみながら、重なり合う肩先に掌を添えた。

 明日──あたし達は「二人」になる。

 この繋がった肩先を切り離して、一体から二体へと。

 氷ノ樹と明日梛、二卵性双生児であるあたし達は……いわゆる結合双生児なのだ。

 世の中にはそうして生まれてきた兄弟・姉妹が、これまでも沢山存在した。

 一生くっついたままで終える二人、分離手術を受けて普通の生活を始めた二人。

 でもあたし達よりも以前は、全員が「一卵性」双生児だった。

 「二卵性」の結合双生児なんて、世界でも初めての奇跡(フシギ)だという。

「よっぽど仲の宜しいご兄妹なのでしょうね」

 周りの人達は勝手な思い込みと慰めで、そう言いのけてくれるけれど。

 そんな言い草に笑顔で応えて、そういう兄妹を演じてきたけれど。

 たった肩先一ヶ所が繋がっただけで、どれだけの苦労をしてきたのか、あたし達の想いを一体誰が理解出来るというの?

 街を歩けば奇異な物を見る眼差しに晒され、服を着るのも一苦労な日常生活、更に思春期を迎えたあたし達は──片割れが異性であることを、まざまざと思い知らされ始めた。


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