政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「夏場でも傷みにくい油淋鶏を作ってみたの。どうだったか感想聞かせてね」

「いいね。酢が効いたものは好きなんだ」

 こんな些細な会話が楽しくて毎日心が満たされる。

「気を遣わなくていいからね。まずかったら正直に教えてよ?」

「わかった」

 返事をしながら私を胸に抱き寄せる旦那さまに説得力はない。

「いってらっしゃい」

「いってきます」

 今度こそ触れるだけのキスをして涼成さんは出ていった。

 ふう、と息をついて、まだ固まっている肩をぐるぐると回す。顔を洗って歯を磨いただけの状態なのでここから私の身支度が始まる。

 今日はシェルターの仕事はないから家の中を隅々まで綺麗にして、凝った料理にチャレンジしようと思っている。

 子犬を迎え入れるまであと一週間。のんびりできるのも今のうちだと大きく伸びをした。

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