こころが揺れるの、とめられない
こころ、じくじく
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「みくる?」
突如背後から聞こえた自分の名前に、「ひぁっ」と弱々しい声を上げる。
へっぴり腰で昇降口の様子を伺っていたわたしは、縮こまらせた体をそのままに、声の主を確かめた。
呆れた顔でわたしを眺めていたのは、同じクラスの彩ちゃん。
通称・さやちん。
「さ、さやちん。おはよう……」
「おはよ」
さやちんは短く応じると、どれどれ……、と。
先ほどのわたしの真似をして、顔だけを昇降口へと覗かせる。
そして、
「綾人も可奈も、いないよ」
わたしを振り返り、ニッ、と笑った。