こころが揺れるの、とめられない
こころ、じくじく

-1-



「みくる?」


突如背後から聞こえた自分の名前に、「ひぁっ」と弱々しい声を上げる。

へっぴり腰で昇降口の様子を伺っていたわたしは、縮こまらせた体をそのままに、声の主を確かめた。


呆れた顔でわたしを眺めていたのは、同じクラスの(さやか)ちゃん。
通称・さやちん。


「さ、さやちん。おはよう……」

「おはよ」


さやちんは短く応じると、どれどれ……、と。
先ほどのわたしの真似をして、顔だけを昇降口へと覗かせる。

そして、


綾人(あやと)可奈(かな)も、いないよ」


わたしを振り返り、ニッ、と笑った。

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