イノセント*ハレーション
エピローグ
12月26日、クリスマス翌日。

昨夜までクリスマスクリスマス~と浮かれていたのに、もうスーパーの店頭にはお正月グッズが並んでいる。

あたしはお正月コーナーを素通りして、ケーキコーナーに直行した。

あった、あった。

クリスマスで売れ残った消費期限が今日までのケーキが。

あたしはどうせ今日食べきるから良いと腹を括って(元から食べる気満々だけど)4号のケーキを購入した。

卒論を書くのに忙しいから誕生日なんて忘れてたなんていったら、キミは怒るだろうか。

でも、キミのために走ったって言えば、笑ってくれるだろうか。

あたしは浮腫んでますますキツくなったブーツを気にしながら全速力で駆け、駅を目指す。

ピロンと音が鳴り、何事かと足を1度止め、スマホを開くと、日葵の寝顔の写真がドーンと画面いっぱいに映し出された。

確か絆奈が言っていた。

クリスマス当日は皆バイトがあって忙しいから翌日に"クリスマスお疲れ様パーティー"を開催するって。

日葵の写真の後に絆奈と琴葉ちゃんの2ショットが送られてきた。

"ソロ三銃士、今宵はいざ楽しまん。"

とのメッセージにあたしは"ww"とだけ送った。

とにもかくにも、日葵がいつもの日葵なら良かった。

日葵はあたしが彼とのことを打ち明けた時、こう言ってくれた。

"日葵は鈍感だけど、なんとなく気づいてた。な~ちゃんと澪くんが赤い糸で結ばれてるって。だから気にしないで。日葵は変わらずな~ちゃんの友達だよ"

日葵のその言葉がなかったら、あたしは今こうしていない。

だから、日葵...ありがと。

日葵も幸せになって。

流れ星にそう願い事をしたいなと思ったその時、鼻先にポタリと雫が落ちた。


「え。嘘?雨?」


たしか、天気予報は...雨だった。

ちゃんと見てから出掛けたのに今日も傘を忘れてしまった。

あたしはケーキの入った袋をリュックに入れ、さらに腕をぶんぶん振り、足をフル回転させた。

走って、走って、走って...。

駅に辿り着いて、はぁはぁはぁと肩を上下させた。

すると、突然、雨が止んだ。

透明な視界の先には...キミがいた。


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