本当は

央の話 4

 年明けて早々。
 俺は礼には内緒で、一時帰国をした。

 3年ぶりの日本。
 まだ、浦島太郎にはなっていないなと、空港からホテルまで、タクシーからの車窓を見ながら、そう思っていた。

 到着が夜便だったため、礼にはまだ帰国したことを知らせていない。

  「帰ってきちゃったの!」

 と、うるさそうにされるかもしれないが、1、2時間でいいから、礼に会って話をしたかった。

 「てるちゃん、どうしちゃったの。」

 と、この俺の変わり様に驚くかもしれない。
 妹のお祝いに、駆けつけた俺を見て。

 自分の不幸せ、、、思い通りにならなかったことを、自分勝手に拗ねていた俺を立ち直らせてくれたのは美郁だ。
 彼女に辛い目に合わせて、やっと気づいた自分の気持ち。

 あの時も素直に自分の気持ちを言えなかった。

 「一緒にいてくれないか?」

 その一言も言えず、拗ねている自分のことも言えず、何も言えずに自分ひとり、日本を逃げ出した、どこまでも卑怯な自分。

 今更、もう一度とか、また会って欲しいとか、息子に会いたい、等々は言えないが、礼を通して、見守れたらそれでいい。
 自分の人生、それだけでいい。
< 22 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop