きんいろ
プロローグ
 ずっと、その風景を描きたいと、願っていた。
 それは五歳の春の夕暮れ。
 私を包む大気には金の紗がかかっている。
 沈んでいく太陽が放つ光で。
 見上げている空は、柔らかなオレンジ色に染まっていた。筆で刷いたような薄紫の雲は細くかすれて、かすれた端がオレンジピンクに照り映えていた。
 私は、どこか高い場所にいる。丘……のような? 空を見上げていた目を足元に落とすと、斜面の下、金色の光の中で、菜の花畑がセピア色にかすんでいた。
 それは少し不思議な記憶。知らない場所に立って、知らない景色を見つめている。帰り道もわからない。けれど、心細くもさみしくもない。
 小さな私を包んでいるのは、安心感。そして、このままどこまでも行けそうな、とても自由な気持ち。
 ずっと心の中にある、金色の夕暮れ─────。
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