熱く甘く溶かして
はじまり未満
 肩よりやや長めのふわっと揺れる黒髪。俺より少し低い身長。綺麗めの顔立ち。

 付き合った女性はほぼこのタイプに属する。

「お前のタイプってわかりやすい」

 大学の友人にはよくそう言われたけど、俺の場合、好みなのかどうかは分からなかった。

 高校生の時に仲が良かったあいつの面影をどこかで探している。

 俺の本性を知って、それがいいと言ってくれた。あいつとだけは本音で語り合えたんだ。大事な友人だった。

 それなのにあいつは突然俺の前から姿を消した。

 大学を変え、携帯の番号を変え、住んでた場所までだ。

 俺があいつに何かをしてしまったのだろうか……今も何もわからないままだった。

 好きだったなんて感情はあの時は抱いてなかった。ただ居心地が良かったんだ。自分を作らなくても、そのままぶつかり合えるあいつとの時間が……。

 もう二度と訪れるはずのないあの日々に、俺はただ想いを馳せるしかなかった。
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