厄介なイケメン、拾ってしまいました。
3 嵐の終わりと波乱の幕開け
  どこからか水の流れる音がする。まだ暗いから、大丈夫。多分。
 ……水の、流れる、音?

 やがてそれは、キュッと蛇口をひねる音とともに消える。
 シャワー? 一体誰が……?

 まだ覚醒していない脳で、部屋を見回す。
 見覚えのない天井が見えた。

「ここは……」
「起きた? オネーサン」

 急に目の前に現れたイケメンのどアップに、一瞬で脳が覚醒した。

「じょじょじょっじょ、上半身隠しなさい!」
「それだと、下半身丸見えになるけど」
「ダメ! っってか! ちゃんと髪拭いてから出なさい!」
「えー、そのうち乾くしいいじゃん。ほら、オネーサンもシャワーどーぞ?」

 昨日私がコンビニで買ったはずのミネラルウォーターを、我が物顔で飲みながら彼は言った。
 それから、スマホを確認すると急いで服を着替えだす。

「あー、ちょっと! 見えないところでやってよ!」
「ん? 別に俺はいいよ。減るもんじゃないし」
「デリカシー!」

 そう叫ぶも、彼は構わず着替えた。
 昨日とは違う、清潔感のある白シャツにジーンズだ。

「オネーサン、悪いけど、俺もう行かなきゃ」
「行くって、どこに?」
「ママ活。今日のママは結構いい金づるだからさ。じゃね、オネーサン」

 そう言って嵐のように部屋を出ていった彼。

 ……ちょい待て。
 ママ活だと?
 金づるだと?

 やっぱり、彼はそういう人だった。
 私も、ただの宿くれた人ってだけだろう。

 なんだか、少しがっかりして。
 がっかりしたことに、驚いて、腹が立った。

 何思ってんの!?
 別にあんなヤツ、永遠に関わらないからいいじゃない!!
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