訳あり子育て中は 御曹司からの猛攻にご注意下さい
呼んでもないのにライバル登場
「りこちゃん、ばいばい」

保育園の玄関で手を振る登生。

「行ってくるからね」
私も手を振り笑顔を向ける。

淳之介さんのマンションから保育園までは自転車で5分。勤め先の『プティボワ』までも10分とかからない。
今までとは向かう方角が違うだけで、距離的には変わらない。
ただし、私の生活はとっても変わった。

まず、朝は淳之介さんが登生を起こして顔を洗い歯磨きをさせてくれる。
その間に私は食事の用意をして、出来上がれば3人で朝食。
最新式のシステムキッチンは当然食洗器もついていて、汚れた食器を洗うこともない。
食事の後は登生を着替えさせ自分の支度をし、淳之介さんを見送って簡単に片づけをしたら出勤するだけ。

夕方も登生を迎えに行き、夕食の買い物をして帰り、3人分の食事を作る。
帰りの遅い淳之介さんとはなかなか一緒に食事をとることができないけれど、それでも週に何日かは早く帰ってきて登生をお風呂に入れてくれる。そんな日には、私もひとりでゆっくりお風呂に入ることができる。

こんな生活を本当に幸せだと思う。
この幸せに慣れてはいけないとわかっていながら、失いたくないと思っている自分に私自身驚いている。
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