初恋の味は苦い

風邪の噂

祥慈から電話があったのは、帰宅してすぐの夜だった。

「ごめん」

開口一番がそれだ。

「ごめんってなに」
「俺、今39度の熱あってさ」

なんとまあ、すごく嫌な予感。

「東京駅着いたあたりからちょっとだるかったんだけど」

世間を騒がしてる感染症におそらく何処かで感染したらしい。

「今日さっき急いで発熱外来で検査受けてきて今検査結果待ちで、もし、陽性だったら、りっちゃんたぶん・・・」

そこまで言われて半ば次の言葉は予想できた。

あの昨今有名な5文字。

その次の言葉を半ば恣意的に遮断する。

「分かった、分かった、とりあえず今休んで、結果が分かったらすぐ言って。解熱剤とか飲み物ある?私部屋の前まで持って行こうか?」
「でもりっちゃん、俺の検査結果出るまで家から出ない方がいいと思う」
「そっか」
「陽性だったら俺上司に言うけど、そこでりっちゃんの名前出すから」
「分かった、とりあえず寝てな、辛いでしょ」

あまりにもグッタリとした声色に、私もお母さんのような気持ちになってしまう。

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