【コミカライズ連載中】姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~

二章 不安

馬車に揺られて数時間。
重たくなった腰を叩いても鈍い痛みは残り続けている。

(……もう、最悪だわ)

疲れた顔をしていたのだろうか。
御者から「大丈夫ですか?」と声が飛ぶ。
反射的に笑みを浮かべて「大丈夫です」とニコリと微笑んだ。

(お姉様ならなんて言うのかしら……休憩を、させてもらえたら良かったのかもしれないけれど)

本音を言ってしまえば腰もお尻もかなり痛い。
こういうところを素直に伝えられずに我慢してしまう。
だから可愛くないと言われるのだろうか。

(お姉様と自分を比べるなんて馬鹿みたい……今更、何もかも遅いのに)

"たまには甘えなくちゃね"
"殿方は頼られると嬉しいみたい"

誰かがそう言っていた気がしたが、結局上手く出来たことはなかった。

フレデリックに甘えた事など、殆どなかったような気がする。
長い付き合い故に、フレデリックが何をすれば嫌がるか、何を言うと不機嫌になるか、どんな時に喜ぶのか。
嫌いな食べ物や好きな食べ物、飲み物が欲しいタイミング……嫌でも全て頭に入っている。
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