真面目系司法書士は年下看護学生に翻弄される

ファミレス



アフターで林さんと一緒にファミレスへ来た。

「もっといいお店でも良かったんだけど」

林は気まずそうにメニューを見ながら呟いた。
高級なお寿司屋さんや、深夜営業の料亭なども近くにあるんが、その後にホテルへ誘われる危険が伴うので優菜は断ることが多かった。特に一対一でのアフターは、まず行かないようにしていた。

「お客さんとは、カラオケとか居酒屋さんとかも行くので、別にファミレスで全然大丈夫です」

パフェとか食べられるし、時間も24時間営業してる。店内も明るいので何の問題もない。優菜はファミレス大好きだ。ただ、キャバ嬢をやっている人は、自分の化粧崩れや酔っぱらってぐだぐだになった姿を明るいライトで照らされるファミレスなんて絶対に来ないだろうと思う。同業者がいないのは有り難い。

「じゃあ、何か食べる?僕は……味噌汁飲みたくなったから、お米食べよう。和食にする」

林さんは深夜に炭水化物を取る猛者だと優菜は驚いた顔をしてしまった。


母が病気で亡くなって、他に身寄りもなく死後のいろんな手続きに力を貸してくれたのが林さんだった。

仕事柄、相続関係に詳しいらしく。母が死後事務委任契約したわけではなかったが、母の友人の息子さんだという林さんは『簡単ですから』と無料でいろいろな事務手続きをしてくれた。その時優菜は兄と二人で林さんと何度か会って話をしていた。

お礼を渡そうとしたが、会社員だから副業NGなんだよねと言って、丁重に断られた。

兄と私に母が残した預貯金と少額の生命保険の死亡保険金などが手元に残った。当時兄は働いていたが、兄妹で仲良く半分にすることとなり、何かあれば兄が私の面倒を見るという話でその時は落ち着いた。


今となっては……だが。
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