やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
第十六章 決めました、これが私の生きる道です!
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王都に着くと、ビアンカは直ぐに王宮へ連れて行かれた。以前と同じ部屋を与えられ、エレナとマリアという、またもや同じ侍女を付けられる。
「先日は、ご挨拶もせずに失礼いたしました」
非礼を詫びた上で、ビアンカは、すぐにイレーネに面会したいと告げた。
「長旅で、お疲れなのでは……?」
エレナたちは心配しつつも、イレーネに目通りさせてくれた。部屋へ通されると、ビアンカは彼女に丁重に挨拶した。
「宮廷舞踏会の際は、本当に申し訳ございませんでした。この度は誠心誠意、お食事を作らせていただく所存です」
「あら、済んだことはもういいのよ」
イレーネは、けろっとしていた。
「それよりも、梨のクレープとやらを是非食べてみたいわ。ゴドフレード様が、たいそう美味しかったと、何度も自慢なさるのですもの。おひとりじめなさるなんて、ずるいわ」
「はい、それはもちろんでございますが……。お加減はいかがでございますか? つわりがひどくていらっしゃるとか」
するとイレーネからは、意外な返事が返ってきた。
「ああ、つわりね。実は、大分治まったの」
「そうなのですか?」
確かにステファノは、口実と言っていたが。まさか、まるっきり嘘だったのだろうか。思わず疑わしげな顔をすれば、イレーネはクスッと笑った。
「ずっとひどかったのは、本当よ? ピーク時なんて、何も受け付けなくて。それなのに周囲は、お腹の子のために栄養を摂れとガミガミ言うし、もうストレスが溜まってねえ。大分治ったことだし、反動で、パーッと美味しいものが食べたくなったわけ」
そういえば、腹の膨らみ具合からして、イレーネはもう安定期だろう。その頃にはつわりは治まったと、妊娠した友人が以前の人生で言っていたな、とビアンカは思い出した。
「かしこまりました。ただ、やはり栄養は、摂るに越したことはありません。美味しくて、かつお腹のお子様のためにも良い食事をお作りしましょう」
献立自体は、ここへ来る道中、ずっと考えていたのだ。吐き気がないのであれば、余計メニューの幅が広がることだろう。まあ、それはいいとして。
ビアンカは、意外な思いでイレーネの顔を見た。イレーネ王太子妃殿下といえば、常に楚々として夫ゴドフレードを立て、淑女中の淑女という印象だったからだ。こんな風にあっけらかんと喋るとは、思わなかった。
「どうかして?」
イレーネが、首をかしげる。ビアンカは、思わず本音を口にしていた。
「いえ……。妃殿下は、気さくで楽しい方でいらっしゃるのだな、と思いまして」
「先日は、ご挨拶もせずに失礼いたしました」
非礼を詫びた上で、ビアンカは、すぐにイレーネに面会したいと告げた。
「長旅で、お疲れなのでは……?」
エレナたちは心配しつつも、イレーネに目通りさせてくれた。部屋へ通されると、ビアンカは彼女に丁重に挨拶した。
「宮廷舞踏会の際は、本当に申し訳ございませんでした。この度は誠心誠意、お食事を作らせていただく所存です」
「あら、済んだことはもういいのよ」
イレーネは、けろっとしていた。
「それよりも、梨のクレープとやらを是非食べてみたいわ。ゴドフレード様が、たいそう美味しかったと、何度も自慢なさるのですもの。おひとりじめなさるなんて、ずるいわ」
「はい、それはもちろんでございますが……。お加減はいかがでございますか? つわりがひどくていらっしゃるとか」
するとイレーネからは、意外な返事が返ってきた。
「ああ、つわりね。実は、大分治まったの」
「そうなのですか?」
確かにステファノは、口実と言っていたが。まさか、まるっきり嘘だったのだろうか。思わず疑わしげな顔をすれば、イレーネはクスッと笑った。
「ずっとひどかったのは、本当よ? ピーク時なんて、何も受け付けなくて。それなのに周囲は、お腹の子のために栄養を摂れとガミガミ言うし、もうストレスが溜まってねえ。大分治ったことだし、反動で、パーッと美味しいものが食べたくなったわけ」
そういえば、腹の膨らみ具合からして、イレーネはもう安定期だろう。その頃にはつわりは治まったと、妊娠した友人が以前の人生で言っていたな、とビアンカは思い出した。
「かしこまりました。ただ、やはり栄養は、摂るに越したことはありません。美味しくて、かつお腹のお子様のためにも良い食事をお作りしましょう」
献立自体は、ここへ来る道中、ずっと考えていたのだ。吐き気がないのであれば、余計メニューの幅が広がることだろう。まあ、それはいいとして。
ビアンカは、意外な思いでイレーネの顔を見た。イレーネ王太子妃殿下といえば、常に楚々として夫ゴドフレードを立て、淑女中の淑女という印象だったからだ。こんな風にあっけらかんと喋るとは、思わなかった。
「どうかして?」
イレーネが、首をかしげる。ビアンカは、思わず本音を口にしていた。
「いえ……。妃殿下は、気さくで楽しい方でいらっしゃるのだな、と思いまして」