やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

6

 ビアンカは、自分の考えを早速両親に話した。

「せっかくドレスも準備していただいたのに、申し訳ないのですけれど……。私、考えが変わりました。結婚したくはございません。どうか、働かせてくださいませ」

 両親は驚き、最初は猛反対した。だが、ビアンカが冷静に説得するうち、次第に心は揺れ始めたようだった。最大の決め手は、悲しいかな、やはり金銭面だった。

「婚活にどれだけの費用がかかるとお思いです? それに、運良くお相手と巡り会えたとして、今度は嫁入り支度に大金が必要になるのですよ?」

 うっと、父・カブリーニ子爵がつまる。

「それだけの出費をして、幸せな結婚生活が待っていると限ったものではありません。我が家の家柄、そして私の容姿を総合的に鑑みて、素晴らしい夫に恵まれるとはとうてい思えませんが」

 父母は、黙り込んだ。そこは否定しろよ、とビアンカは内心苛立った。

「それでしたら、働く方が確実というもの。婚活や結婚の費用は、妹たちに回してくださいませ」

「いや、でもだな……。娘を働かせるなど、我が家にも体裁というものがある」

 しばし考え込んだ後、父はそう言い出した。

(問題は、そこかよ!)

 ビアンカは、声を荒らげた。

「事実上、私は働いておりますが。日夜、この屋敷の食事を用意しているのは、誰だとお思いです?」

 使用人が雇えないせいで、ビアンカは料理番の役割を果たしているのだ。父が、がっくりとうなだれる。

「それを言われると、どうしようもない……。では、望み通り、お前の就職先を探すとしよう」

 母は、最後まで残念そうな顔つきをしていた。

「仕事をすること自体は、止めはしないけれど……。でも、結婚しないと今から決めるのは、どうかと思うわ。働く中でも、この方に嫁ごうと思う男性が現れたら、いつでも相談なさいね? 嫁入り支度なんて、それからでもどうにかなるわ」

 母は、そう言って微笑んだのだった。
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