やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
7
一週間はあっという間に過ぎ、ついに武芸試合の前日を迎えた。その日もビアンカは、ステファノの食卓に同席していた。
「ではそなたは、昔から家族の食事の支度をしていたのか」
豚の脂入りソーセージを優雅に口に運びながら、ステファノが尋ねる。普段騎士たちに出しているのと同じメニューだが、食べ方一つ取っても気品にあふれている。ビアンカは、密かに感心した。
「はい。かつては料理番もいたのですが、彼が辞めた折、父が事業に失敗したのです。恥ずかしながら新しい人間を雇う余裕がなく、それで私が担当するようになりました」
初日を除き、ステファノとの会話は、料理とは何ら関係のない話題ばかりだ。元々、料理の説明という名目で呼ばれたのによいのだろうかと思うが、ステファノはそれでいいと言い張った。
『食事中は、リラックスするのが何よりなのであろう? そなたが、そう申したのではないか』
そう言いながら最近のステファノは、ビアンカについてあれこれ尋ねてくる。座らされる席も相変わらず隣で、おまけに気のせいか、距離も少しずつ近くなっている気がする。ビアンカとしては、恥ずかしくていたたまれない。
「それは、難儀であったことだろう」
「それほどでも……。妹が二人おりますので、人の世話をするのは慣れておりますし。それに、家族が私の作ったものを喜んで食べてくれるのは、嬉しかったです」
「そういうものか。私には、下に兄弟がおらぬので、あまり想像できぬが」
兄弟うんぬんではなく、置かれた環境の問題ではないかと思うが、ビアンカは口に出さなかった。
「それにしても。家族団らんで食事を取るというのは、楽しいものであろうな」
ステファノがふと呟く。ビアンカは、ドキリとした。王妃、つまりステファノの母は、ずっと前に亡くなったのだ。父・コンスタンティーノ三世や、兄・ゴドフレード王太子だって、多忙に決まっている。共に食事をする機会など、ないに違いなかった。
「ステファノ殿下も、いずれお妃を娶られ、お子様に恵まれれば、ご家族でお食事がおできになりますわ」
励ますように力強く言えば、ステファノはふっと微笑んだ。
「では、妃を迎えたら、食事は必ず共にすることにしよう」
チクリと胸が痛んだ。
「ではそなたは、昔から家族の食事の支度をしていたのか」
豚の脂入りソーセージを優雅に口に運びながら、ステファノが尋ねる。普段騎士たちに出しているのと同じメニューだが、食べ方一つ取っても気品にあふれている。ビアンカは、密かに感心した。
「はい。かつては料理番もいたのですが、彼が辞めた折、父が事業に失敗したのです。恥ずかしながら新しい人間を雇う余裕がなく、それで私が担当するようになりました」
初日を除き、ステファノとの会話は、料理とは何ら関係のない話題ばかりだ。元々、料理の説明という名目で呼ばれたのによいのだろうかと思うが、ステファノはそれでいいと言い張った。
『食事中は、リラックスするのが何よりなのであろう? そなたが、そう申したのではないか』
そう言いながら最近のステファノは、ビアンカについてあれこれ尋ねてくる。座らされる席も相変わらず隣で、おまけに気のせいか、距離も少しずつ近くなっている気がする。ビアンカとしては、恥ずかしくていたたまれない。
「それは、難儀であったことだろう」
「それほどでも……。妹が二人おりますので、人の世話をするのは慣れておりますし。それに、家族が私の作ったものを喜んで食べてくれるのは、嬉しかったです」
「そういうものか。私には、下に兄弟がおらぬので、あまり想像できぬが」
兄弟うんぬんではなく、置かれた環境の問題ではないかと思うが、ビアンカは口に出さなかった。
「それにしても。家族団らんで食事を取るというのは、楽しいものであろうな」
ステファノがふと呟く。ビアンカは、ドキリとした。王妃、つまりステファノの母は、ずっと前に亡くなったのだ。父・コンスタンティーノ三世や、兄・ゴドフレード王太子だって、多忙に決まっている。共に食事をする機会など、ないに違いなかった。
「ステファノ殿下も、いずれお妃を娶られ、お子様に恵まれれば、ご家族でお食事がおできになりますわ」
励ますように力強く言えば、ステファノはふっと微笑んだ。
「では、妃を迎えたら、食事は必ず共にすることにしよう」
チクリと胸が痛んだ。