元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

第三十七話


 ――ユリウス先生が、『憲兵を辞めた』……?

 それだけでも驚きなのに。

(その原因が、私……?)

 頭が混乱して、咄嗟に声が出なかった。

「あいつ、憲兵だったのかよ!」
「あの方、憲兵でしたの!?」

 でもラウルとイザベラがほぼ同時に声を上げてくれたお蔭で、私は少しだけ平静を取り戻すことが出来た。

(ユリウス先生が、憲兵だった? じゃあ、これは……)

 私は手の中の金バッジを見下ろす。

 ――先生本人のもの……?

 ローレン大佐は軽く頷く。

「そ、つい半年前までね。それが急に辞めるってんだから驚いた驚いた。なあ?」
「え? は、はいっ!」

 いきなり問いかけられた門番が慌てた様子で返事をする。
 ということは門番も本当はユリウス先生のことを知っていて、しらを切っていたのだ。

「まぁ、ここじゃなんだから、どっか移動しよっか」

 そうしてローレン大佐は中央広場の方へと歩き出した。
 私たちは顔を見合わせ、彼について行くことにした。

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