干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

副社長 野田俊介

 野田俊介(のだしゅんすけ)はエレベーターを降りると、まっすぐに廊下の突き当りの部屋へ向かった。

 入り口の扉の上には“副社長室”の文字が見える。


「何かあれば声をかける」

 そう後ろに向かって小さく言い捨てると、雑に扉を開け一人で中へ入った。


 窓際の大きな赤茶色のデスクに近寄り、置いてある資料にさっと目を通す。

 そして大きな椅子に深く腰をかけると、やっとはぁと深く息を吐いた。


「っつ……」

 痛めた手首を反対の手で触りながら、数日前の事を思い出していた。


 その日、普段は全く連絡をよこさない父親である社長から、突然電話が入ったのだった。


「お前に新プロジェクトを任せる」

 静かな声で淡々と話すそれは、息子に期待を抱く親の言い方ではなかった。


「ただし、軌道に乗せられなければ……お前には子会社に行ってもらう」


 ――こっちが本音か……。


 俊介はもう一度、深く息を吐く。

 そして大きな椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見上げた。
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