溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
10、役立たずの政略妻


「熱は、なさそうだが一応検温しよう」


 ベッドに横たわったまま、手渡された体温計を脇に挟む。

 すぐにピピッと電子音が鳴り、取り出した体温計には三十六度七分の表示が。

 それを見たベッド脇に立つ晃汰さんは、「七度はないか」と呟く。

 普段六時には起床して朝食の準備などに取りかかる私が、今朝は目覚ましを無視して寝続けていた。

 そんな私の体調を心配した晃汰さんは、検温してみようと体温計を取りに行ってくれた。

 確かに体がだるくて重く、普段あまり感じない体調の変化がある。昨晩は夕食もあまり進まなかった。なんとなく食欲がなかったのだ。

 八月に入り夏本番。

 ここのところ連日の猛暑で日中の最高気温は平気で三十五度近くまで上がるから、体も参っている気がする。エアコンは欠かせないから、体温調節も難しい。

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