国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
17.魔力の解放
 身体を繋げる。つまり、処女を失った、ということ。もちろん、相手はあのサミュエルだ。付き合い始めて一か月が過ぎた頃、彼から求められてそれに応えた。ただ、それだけ。
「……はい」
 フローラが静かに返事をすると、クリスの身体が震えたようにも感じた。それは温もりを感じる距離にいたからわかった。
「フローラ、別にあなたを責めているわけではありません。事実確認をしたかっただけです」
「はい」
 クリスが言い訳がましくそのように言葉を発することも珍しく、フローラ自身も身体を少し強張らせてしまう。その緊張が彼に伝わったのかもしれない。すっと、フローラが重ねている手の上に、クリスが自分の手を重ねてきた。
「フローラ自身が気付いているかどうか、わかりませんが。あなたは長い間、その魔力を封じられていたのです」
「え?」
 驚いてクリスの方に視線を向けると、今度は彼と視線が合った。すると、彼は珍しくニッコリと微笑んだ。それはフローラが驚かないようにという彼なりの心遣いなのだろう。
「誰が何のためにあなたの魔力を封じたのかはわかりませんが、その魔力が解放されたきっかけは、あなたがあの男と身体を繋げたことになります」
 なかなか受け入れがたい状況だった。クリスの口から前の男との関係について聞かされるとは思ってもいなかった。
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