ひとりぼっちのさくらんぼ
第三話
数日後の夜。
市原さんがお姉さんの家にやって来た。
今日はスーツを着ていて、いつもより一層、「大人」な市原さん。
落ち着いて見えるっていうか。
若干老けて見えるっていうか。
リビングに入ってきた市原さんは、キッチンに立って「何か飲む?」と尋ねるお姉さんのそばに行き、後ろからそっと抱きしめた。
「わっ、ど、どうしたの?」
「うん、ごめん。ビックリさせたよね」
「……なんか、元気ない?」
お姉さんは市原さんの腕の中で振り返り、市原さんと目を合わせた。
「上条さん、何か変わったこととかあった?」
市原さんの質問返しに、お姉さんは少し考えてから、
「ううん。何もないよ。大丈夫。市原くんは?」
と、心配そうな声。
「……うん。ちゃんと話す。でも、その前に充電させて」
市原さんはぎゅうっとお姉さんを抱きしめて、頭のてっぺんにキスした。
それからおでこ、耳、首へと、キスは続く。