罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~

39 シオンの気持ちに気がつきました

 シオンは赤い頬を隠すように自身の左手で顔を覆った。

「リナリアは、私の気持ちに気がついていないし、もし気がついたとしても応える気なんてないのに……。そんなことを言うなんて、本当にずるい……」
「シオン?」

 名前を呼ぶとすねるようにフイっと顔をそらされてしまう。

「私、何か気に障ることを言いましたか? だったらごめんなさい」
「……本当に気づいていないの?」
「え?」

「私がリナリアを愛しているってこと」

 そう告げたシオンの顔は強張っていた。いつもは優しそうに細められる瞳には必死さが浮かび、いつもなら上品に微笑んでいる口元はかすかに震えている。

 リナリアは、もう認めるしかなかった。

(これは罰ゲームでも、お仕置きでも、ウソでも、私の勘違いでもない)

 馬車の中でシオンから語られたお茶会での初恋の話も、毎朝かかさずに贈ってくれるリナリアの花束も、その花束に込められた花言葉も全てがそうだと語っている。

(シオンは、私のことが好きなんだ)

 認めたとたんにリナリアの全身が熱くなった。自分の心臓の音がうるさいくらい聞こえてくる。シオンは小さなため息をついた。

「ごめんね。本当にずるいのは私なんだ。リナリアに拒絶されたくなくて、サジェスの罰ゲームを利用して卑怯な方法で近づいた。リナリアに少しでもふれてもらいたくてお仕置きを考えた。リナリアと本当の恋人になりたかったけど、リナリアに断られそうだったから、恋人のふりだとウソをついたんだ」

 おそるおそるシオンの右腕が伸びてきて、そっと手のひらがリナリアの頬に添えられた。シオンの手のひらから伝わってくる体温はとても心地よく、リナリアの心臓の音はさらにうるさくなってしまう。

「今も、リナリアが私にだけふれられても大丈夫だって言ってくれたから、こうして真実を話しているんだ。だから、本当に私は卑怯でずるい男なんだ。でも……リナリアは私以外の男は無理なんでしょう?」

 リナリアが小さく頷くと、シオンはフワッと幸せそうに微笑んだ。

「だったら、もう私たちは結婚するしかないよね?」
「でも……」

 それは無理だという前に、シオンの左手の人差し指がリナリアの唇に優しくふれた。

「できるできないじゃなくて、リナリアはどうしたい? 私とずっと一緒にいたい?」

 そんなことは考えるまでもない。

「はい、私もシオンとずっと一緒に――」

 『いたいです』と最後まで言い終わる前に、シオンに抱きしめられた。シオンの温かさとシオンの香りに包まれて、幸せな気持ちで満たされていく。

「ありがとう、リナリア」

 耳元でシオンの声が聞こえた。

「私を見つけてくれて、そして、私を選んでくれて。ありがとう」

 シオンの声は震えていて、泣いているように聞こえた。
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