罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~

43 もう一人仲間が増えました

 ゼダに護衛をされながら馬車の待合室に行くと、ケイトに出会った。ケイトはリナリアを見つけると、嬉しそうに駆け寄ってくる。

「リナリア、今から帰るの?」
「うん、ケイトも? いつもより遅いのね」

「そうなの、図書館で面白い本を見つけて今まで夢中になっちゃって……」

 そこでようやくケイトは、側にいるゼダに気がついたようだ。「あっ」と呟くと慌ててゼダに会釈する。

「ゼダ様、失礼いたしました。リナリアとお話し中でしたか?」

 ケイトの質問に、ゼダは「いいえ」と答えると「私はこれで失礼します」と礼儀正しく頭を下げた。

 ゼダの後ろ姿を見つめながらケイトが「ゼダ様ってすごく姿勢が綺麗よね」と呟く。確かにゼダは、いつでも背筋が伸びていてキビキビと動いていた。

「ケイトって、いつもゼダ様のことを褒めるのね」

 そう言うと、ケイトは「そうだったかしら?」と首をかしげた。

「そうよ。確か、前もゼダ様のことを、『真面目そうで素敵』って言っていたわよ」

 美少女ケイトは、いつもほぼ初対面の男子生徒に声をかけられ困っている。そのせいで、なんとなくケイトは男性が苦手なイメージがあったが、ゼダに対しては違うようだ。

(うーん……確かに真面目で誠実そうなゼダ様ならケイトを安心して任せられるわ。しかも、強いんだからケイトを変な男からも守ってくれそう。ゼダ様、合格!)

 我ながら『何目線?』と言いたいところだが、大切な友達には幸せになってほしいと願ってしまう。

 以前のリナリアは『ケイトにはもっと華やかな外見の男性が似合うわ』と思っていたが、華やかなシオンが平凡なリナリアを心の底から愛してくれていると知り、リナリアの考えも変わった。

 重要なのは、相手と外見の釣り合いが取れているのかではなく、どれほどお互いに相手を大切にできるかということなのだと今なら分かる。

(ケイトも私たちの仲間になってくれないかな? そうすればゼダ様とケイトの接点もできるし、三人ならシオンを本当に幸せにする道が早く見つかるかもしれない)

 時間が遅いせいか、馬車の待合室にはリナリアとケイト以外の生徒の姿はない。

「ケイト、あのね。聞いてほしい話があるんだけど、今、少しいい?」

 ケイトは待合室のベンチに座った。

「もちろん! なんでも聞くわよ」

 リナリアはケイトの隣に座ると、ケイトを見つめた。ケイトの美しい琥珀色の瞳が、リナリアの言葉の続きを待っている。

「あのね、私とシオン殿下のことなんだけど……」

 シオンが『王室からの除名を望んでいること』は、気軽に話して良いことではない。ただ、ケイトなら誰にも言わないと分かっているし、もし、ケイトが誰かに秘密を漏らしてしまっても、それはケイトのせいではなく、ケイトにこの話をした自分が悪いと思えるくらいには、ケイトのことが好きだ。

 リナリアが覚悟の上でケイトに、シオンとローレルの本当の関係を話すと、ケイトは花の蕾のように可愛らしい唇をポカンと開けた。そして、予想外に「やっぱりね」と呟いた。

「え?」

 リナリアが驚いていると、ケイトは「そうだと思っていたわ!」と白い頬を興奮でピンク色に染める。

 リナリアが「どういうこと?」と聞くと、ケイトは「ローレル殿下のことよ!」と教えてくれた。

「私、前にもリナリアに言ったと思うけど、昔から変なひとに絡まれやすくて、人を見る目だけはしっかりしている自信があるの。だから、ローレル殿下のこと、ずっと怪しいと思っていたのよ」
「そうなの!?」

 ケイトは、「ローレル殿下のことは、あまりにも不敬すぎて今まで誰にも言えなかったけど、今日、貴女に言えてスッキリしたわ」と深いため息をついた。

 言われてみればケイトは、リナリアと同じで、誰もがお近づきになりたがるローレルに近づこうとしない珍しい女子生徒だった。

「それに、リナリアには悪いけど、シオン殿下も、その、ちょっと……」

 言葉を濁しているが、ケイトの表情には苦悩が浮かんでいる。

「だから、貴女達が付き合っていると聞いてから少し心配だったの。でも、シオン殿下は、そういう事情があったのね。なるほどね」

 ケイトは、しきりに何かに納得している。

「シオン殿下が、リナリアにだけはお優しいようで安心したわ。リナリアがそんなシオン殿下を好きだと言うなら、私も全力で応援するわ」
「ケイト、今まで心配かけてごめんね。うん、シオン殿下はとてもお優しいわよ」

 ケイトは「そうでしょう? シオン殿下は、リナリアにだけは、お優しいと思うわ」と『だけは』を強調しながら可憐に微笑んだ。
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