一夜限りのお相手が溺愛先生へと変貌しました
07. 今この瞬間の感情




翌日、体調も身なりも整えた繭が1日半振りに出社すると、真っ先に向かったのは既に出勤してメールチェックをしている部長のデスクだった。



「部長、おはようございます」
「おう里中早いな、体調はもういいのか?」



いつも通り軽い気持ちで尋ねてきた部長に対し、突然声を低くボリュームを下げ、耳打ちするように前屈みになった繭。



「その事で、ちょっとお話が……」
「あ?」
「出来れば別室で……」



朝から深刻な顔を向けてくる後輩に、さすがの部長も緊張が走る。

他の社員には聞かれたくないほどの、体調についての話とは一体何なのか。

繭の事だから病院でしっかり診てもらったに違いないと考える部長は、恐らく深刻な何かを宣告されたのだと悟った。


すると部長の手が慌ててパソコンに向くと、会議室の空き確認を始める。



「わ、わかった。今会議室押さえるから」
「……ありがとうございます」
「よし、A室が空いてる。じゃあ朝礼後直ぐにそこで話そう」
「はい、よろしくお願いします」



そう言って会釈した繭は、スッと背を向けると自分のデスクに着席して、普段通り業務の準備を始めた。

その様子を黙って見ていた部長は、可愛がっていた後輩の繭が初めて自分の事についてわざわざ場を変えて話そうとしてきたので、只事ではない事だけは感じ取る。



「……医者に働き過ぎって言われたのか?それとも」



とんでもない病気が見つかった?ストレス?長期休暇?と色んな思考が浮かんで、このままでは仕事が手につかないレベル。


朝礼後すぐに会議室が空いていた事を感謝した部長は、途中にしていたメールチェックを止めて、朝礼が始まるまでの時間を心の準備に費やす事にした。



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