「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~

寝坊

「おはようございます」

 きっと何度もノックをしたり呼んでくれていたのね。

 ハッと目が覚めたら、広い寝室内は陽光で満ち溢れていた。

 一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。だけど、扉の向こうから呼びかけている声で思い出した。

 そうだったわ。ここは、バリオーニ帝国の皇宮だった。

 慌てて飛び起き、フカフカの布団をかきわけ、天蓋付きの立派な寝台から転がるようにしておりた。

「ど、どうぞ」
「失礼いたします」

 明るい声とともに入ってきたのは、赤色のおさげ髪で丸メガネをかけた侍女である。

「公爵令嬢、おはようございます。フィオレ・ジャケッタと申します。公爵令嬢のお世話をさせていただきます。よろしくお願い致します」

 すっごく明るい人だわ。

 朝の陽光みたい。

 気分が明るくなる。
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