「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~

妹と兄

「兄は、一応陛下の側近なの」
「妹とおれは、陛下とブルーノの乳母子なんだ」

 知的な美貌に浮かぶ笑顔もいいわね。

 って、わたしってば何を言っているの?

 バリオーニ帝国にやって来て、苦手な男性と喋る機会が急に増えた。だから、動揺しているのかしら。
 もっとも、男性だけでなく女性と喋ることも増えたけど。

 男女問わず、人と接する機会が多くなったわ。

「お兄様。それにしても、よくここに来るってわかったわね」
「そんなこと、お見通しさ。朝食のとき、『デボラにお茶会に招待されたから行くつもりなの』って言っていただろう?」

 彼は、妹の真似をして言った。

 すごくエルマに似ている。

 ボルディーガ侯爵家の人たちって物真似がうまい家系なのかしら。

 というくらい、エルマのデボラの物真似もバルナバのエルマの物真似もうますぎる。
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