若旦那様の憂鬱

結婚するという事

花は柊生に抱き付いて大泣きしたい気持ちを抑えて、ポロポロ流れる涙を拭きながらケーキを食べる。

家族みんなで花の様子を心配しつつも、
一緒にケーキを食べる。

康生が突然、

「はぁっ⁉︎」
と言葉を発すると共に、
花のフォークを持つ手を掴み、
自分の目の前に持っていく。

右薬指の指輪を見つめ唖然とする。

えっ⁉︎
と言う顔をして柊生と花を見比べ、

目の前の父と母を見つめる。

父と母はうんうんと意味ありげな顔で見つめ合い、ケーキ皿を持ってキッチンの方へそそくさと逃げていった。

「おい、いつまで触ってんだよ。」
柊生が苛立った声で、
花の手を掴んで離さない康生の手に護身術でみる技をかける。

「イテテテッ。」
康生は痛がりすぐさま離すが、

「何で?
何でみんな知ってて、俺だけ知らないの?
ちょっと……
ショックなんだけど、 
俺1人だけ、はぶせじゃん。
何なんだよ、1番可哀想なの俺じゃ無い⁉︎」

そう言い出すから、
柊生は花の後ろから康生の頭を小突く。

「花の気持ちも考えろ!」

「イテッ!」

それでも康生は話す事を止めない。

「花、いいか。
ちょっと考え直した方がいい。
兄貴は高嶺の花みたいなもんだぞ。
密かにファンクラブがあるくらいの男だ。
巷の女子達の恨みを……。」

話の途中で、柊生はまた康生を小突く。

「ッイテ!」

「花、こいつの言ってる事は全部嘘だ。
気にするな。
何かあっても俺が花を守るから、心配しなくていい。」
花に余分な不安を与えたく無くて、
柊生は慌ててそう言う。

花は3つ目のケーキを食べながら、
うんうんと相槌を打つ。

兄弟ゲンカに巻き込まれ、気付けば涙も止まっていた。

「…お前らが結婚すると、
花は俺の姉になるのか⁉︎」
康生がまだそう花に話しかけてくるから、
ついに柊生が静かにキレる。

「お前、うるさい…。」

花の手を持って立ち上がらせて、

「部屋に行こう。」
と誘う。

こくんと花は頷いて連れられるままに着いていく。

「女将さん、ちょっと2階で花と話してきます。」
母に断りを入れる辺りがさすが抜かりない。
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