彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
 ふたりは不思議な距離感で話している。お茶を出すと、彼から隣の一人席に座るよう言われた。すると、こちらを見た三橋部長が切り出した。

「森川さん。僕に付いてもらう話が少し延期になった。先ほど社長から呼ばれてね。永峰取締役に大きな仕事が入るそうで、秘書の君がどうしても必要だそうだ、ねえ、俊樹さん」

 私は驚いた。あっけにとられて、彼の顔を見た。すると彼は私を全く見ないで三橋部長を凝視している。

「達也君。長い付き合いだから、いろいろと我慢して今までも許してきたつもりだ。だが、今後は本気で対応させてもらう」

 恐ろしい目で三橋部長を睨む。それをニヤッと笑って受け流す三橋部長。

「こんなに怒った俊樹さんを見たのは今日が初めてだった。彼女のことは地雷かもしれないということは覚悟していました。でもあの契約高を見せられたら私の件は二の次になるのもしょうがないですね。会長もこれでは口を出せないでしょう」

 俊樹さんが、やっと私を見た。

「さて森川さん、これから忙しくなる。社長からは二週間の猶予をもらった。氷室商事の大きな取引を計画中だ。他言無用で頼む。一部の営業にしか内容は明かさず、内密の社長案件になる。それまではとにかく忙しいので君に秘書をしっかり頼みたい」

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