独占愛～冷酷御曹司の甘い誘惑
２．運命≠必然
五月の連休を終え、ビジネス街には日常の喧騒が戻りつつある。

金曜日の朝、勤務先に向かって歩いていると、突如ドンッと肩に大きな衝撃がはしり、体が後方へ傾いた。

肩までの焦げ茶色の髪が揺れ、足を踏ん張るも間に合わず、尻もちをついた。

手にしていた紙袋がドサリと落下する。

私とぶつかった長身の女性は転びはしなかったが、よろけて抱えていた荷物を落としていた。


「ごめんなさい、大丈夫ですか！？　ケガはされていませんか？」


地面に散らばった荷物もそのままに、焦った様子の女性が声を上げる。


「平気、です。あの、あなたはどこか痛めていませんか？」


「私は無傷です。本当にすみません。急いでいてよく周りを見ていなくて……」


謝罪を繰り返しながら女性は私を起こし、立たせてくれた。


「いえ、どうか気になさらないでください。ケガもしていませんし」


心配そうな表情の女性に明るく返答する。

前下がりのショートカットヘアにライトグレーのパンツと白いパンプスがとてもよく似合っている。

現在二十七歳の私より少し年上だろうか？
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