君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~

グリシーヌの王女

ここはユーフォルビア王国を治めるウルフェニー家が住まう居城の一角グリシーヌ宮。
この宮の主は、ベルナール国王の第一王女ジゼル。
グリシーヌ(フジの花)という可憐な名前がついているものの、
城の最も北側に位置しており、夏は高温多湿・冬は隙間風の吹く物寂しい場所だ。

なぜこんな場所に国王の第一王女という高貴な身分のジゼルが住んでいるのか?
それは、ジゼルが国王にとって「どうでもいい存在」だから。

ジゼルの母エドウィナ前王妃はユーフォルビア王国の北に位置するウィステリア王国から嫁いできたのだが、
いわゆる政略結婚で夫婦仲は最悪だった。
ベルナール国王はエドウィナとの間にジゼルが誕生すると、
「これで政略結婚の義務は果たした」と言わんばかりに
エドウィナとジゼルを北の離宮に追いやって好き放題し始めたのだった。
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