君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~

生まれ変わるマグノリア

「ね、エリー。言ったとおりでしょ?僕たちが勝ったんだ。ウィステリアの平和は守られたんだよ。」
ウィリアムはアリスとアフタヌーンティーを楽しんでいた。
こんなにくつろいだ午後を過ごすのも久しぶりだ。
「えぇ、本当に。あなたの言ったとおりね。」
「マグノリアとユーフォルビアが攻めて来た時はさすがに焦ったけど、結果的にユーフォルビア王家とヴァランタン侯爵を捕まえることができて思わぬお釣りが来たよ。その対価は決して安くはなかったけれどね。」
この戦争でウィステリアは国土を破壊され、死傷者も多数出てしまった。
終戦宣言後に1週間国家全体で喪に服したが、それでも国民の間に残った傷は癒えることはない。

「ユーフォルビアとマグノリアへの賠償要求は何にするか決めたの?」
「うん。昨日、閣僚たちとの会議できっちりまとめたよ。ヘアフォード公とフェアファックス公の2人の領地が最も被害を受けたから、そこへの補償を重点的にね。あとハイドランジアへの御礼もしなきゃいけないからな~。」
「上手くいくように願ってるわ。」
「うん、ありがとう。」

穏やかな笑みを浮かべる夫を横目にアリスもほっと一息をつく。
戦争というものを初めて経験したアリスは、
日に日に険しくなる夫の表情をただただ見つめることしか出来なかった。
ジゼルやエドワードを連れて病院に慰問に訪れていたが、
病院内に立ち込める血の匂いにはじめは卒倒しそうになったものだ。
しかし国を守るために毎日懸命に策をめぐらせる夫を見て、
王の妃たる自分がこれではいけないと奮起し、
女性や子供たちを必死に励まし続けた。
だからこそ勝利の報せを聞いた時は本当に嬉しく、国民たちと手を取り合って喜んだのだった。
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