【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第117話】

時は流れて…

2025年7月10日頃であった。

この日、西〜東日本の広い範囲で梅雨明けの発表があった。

とりわけこの日は、不快指数がメチャメチャ高い1日だった。

アタシは、お料理ができる気立てのいいお嫁さんになるために一生懸命に努力した。

あいつの家で暮らしはじめてから1ヶ月が経過した時からだったと思うけど、家庭内の空気が一気に険悪ムードにおちいった。

あいつと義弟《おとうと》と義父が『男子厨房に入るべからず』と言うからアタシがごはんを作っていた。

義父は、アタシの手料理が楽しみだと言うて喜んだ。

義父は、アタシとあいつが再婚したので『かずひこ(義弟)が少しずつだが心を開くようになった。』とも喜んでいた。

しかし、あいつはアタシが義父と義弟ばかりによくしているからないがしろにされたと怒りまくった。

だからあいつは、アタシに対して暴力をふるうようになった。

7月10日の夕方6時頃だった。

この時、あいつはひどく酒に酔っていた。

あいつは、アタシに対して『オヤジやかずひこにばかりよくしているから絶対に許さない!!』と怒鳴り付けた。

アタシは、泣きそうな声で『違うわよぉ…』とあいつに言うた。

だからあいつとアタシは、大ゲンカを起こした。

アタシは、ものすごく泣きそうな声であいつに言うた。

「あなた!!あなたたちが『男子厨房に入らず』と言うからアタシが一生懸命になっておいしいごはんを作っているのよ!!それなのにアタシにどんな落ち度があると言うのよ!?」
「何やオドレ!!オドレはいつからダンナに口答えをするようになった!?オドレはいつからかずひこのカノジョになった!?」
「あなたは、アタシがかずひこさんに対してやらしいことをしたと言いたいの!?」
「かずひこが心を開かせるためにかずひこと関係を持ったんだろ!!」
「アタシはかずひこさんと義父さまにおいしいごはんを作ってあげたいから一生懸命に努力したのに、なんであなたはアタシをイカクするのよ!?」
「きついイカクを加えたのはオドレだ!!オドレがかずひこが好きだと言うた!!オレのことはキライと言うた!!」
「違うわよぉ…」
「口答えするな!!」

(ガツーン!!)

あいつは、力をこめてアタシの顔をグーで思い切り殴った。

「オドレはいつから口答えするようになったん?オドレはいつからかずひことみだらな関係を持つようになった!?だからぶっ殺してやる!!」
「何するのよ!!」

ダンナは、アタシをクッションの上に倒したあと身体を押さえつけた。

「あなたやめて!!イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)

ダンナは、アタシが着ていた白のブラウスをズタズタに破いた。

(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)

「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

つづいて、カッターナイフでブラウスの下に着ていたベージュのインナーをズタズタに切り裂いた。

インナーの中から、刺青《すみ》に染まった身体があらわになった。

刺青《すみ》に染まった身体を見たあいつは、よりし烈な怒りに震えながらアタシに言うた。

「なんだそれは…オドレの実家《いえ》は暴力団《やーさん》か!?」

アタシは、あいつに対して震える声で『やめて…助けて〜』と許しごいをした。

「やめて…やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて…イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

(ブチッ)

あいつは、インナーの下に着けていた白のブラジャーを思い切りちぎった。

「ふざけるな!!ドインラン女!!」
「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

思い切りブチ切れたあいつは、アタシが着ていたクリーム色のスカートの中に手首を入れて、白のショーツを無理やり脱がした。

その後、あいつはアタシが着ていたスカートを脱がした。

刺青に染まった身体があらわになった。

思い切りブチ切れたあいつは、切れたなわとびの縄でアタシの背中を叩きまくった。

(ピシーン!!ピシーン!!ピシーン!!ピシーン!!)

「ドインラン女!!ヤクザの娘!!オドレはどこの組の女だ!!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
「それとも、オドレは組長の元愛人か!?」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」

アタシは泣きながら許しごいをした。

しかし、あいつはヨウシャなくアタシのに背中をなわとびの縄でたたいた。

この時、義弟《おとうと》が帰宅した。

目の前でレイプシーンを見た義弟《おとうと》は、あいつを止めに入った。

「にいさんやめてくれ!!」
「オドレぶっ殺してやる!!」

思い切りブチ切れたあいつは、義弟《おとうと》をボコボコに殴りつけた。

「にいさん!!にいさん!!」
「ぶっ殺してやる!!ドインラン!!ナマケモノ!!死ねや!!」

あいつは、義弟《おとうと》を硬《かた》いもので激しく殴りつけた。

あいつからボコボコに殴られた義弟《おとうと》は、頭に大ケガを負った。

サイアク…

今度はいい人だからと思って選んだダンナと思ったら…

またきつい暴力をふるわれた…

もうだめ…

あいつからどぎつい暴力を受けてひどく傷ついたアタシは、日没から夜へ向かう道を歩いて由比ヶ浜へ行った。

(ザザーン、ザザーン、ザザーン、ザザーン、ザザーン、ザザーン…)

由比ヶ浜に着いたアタシは、うつろな表情で夜空を見上げながら研ナオコさんの歌で『かもめはかもめ』を震える声で歌った。

もうだめ…

アタシ…

死にたい…

7月11日の夕方6時頃であった。

家の食卓に、アタシとダンナと義父がいた。

義弟《おとうと》は、ゆうべ直《じか》にレイプシーンを見たことが原因で再び心を閉ざした。

同時に、家でごはんを食べなくなった。

テーブルの上は、なんにもなかった。

義父は、残念な表情でダンナに言うた。

「ったく…どういうことだ…またお嫁さんにきつい暴力をふるったのか…父さんは残念だ…とし子さん…かわいそうに…」

義父は、アタシの右のほほに貼られている大きなバンソウコウを見て大きくため息をついた。

その後、つらい声で言うた。

「こんなことになるのだったら、やめた方がよかった…最初に再婚した時からおかしいと思っていた…」
「ふざけたことを言うな色欲ジジイ!!悪いのは全部あんたにあるんだよ!!」
「とし子さんにどうしてきつい暴力をふるったのだ!!かずひこが直《じか》にレイプシーンを見たことが原因で、かずひこは再び心を閉ざした!!」
「とし子がかずひことやらしい関係を持ったからオレに犯されたのだ!!」
「とし子さんは、一生懸命になってごはんを作っているのだよ…うちにはお姉さんたちがいないのだよ…」
「だったら今すぐに連れ戻せ!!」
「できればそのようにしたいよ…だけど…すぐにはできないのだよ…お父さんはからだが弱いし、かずひこもお前も料理ができない…」
「キサマが男子チュウボウに入るべからずと言い続けたキサマが全部悪いのだよ!!」
「それじゃあ、お前はどうしたいのだよ…」
「とし子と離婚する!!あんたとかずひこがとし子にやらしいことをしたから離婚する!!」
「ワシはとし子さんにやらしいことはしていないよぉ~」
「だまれドインランクソジジイ!!」

あいつに怒鳴られた義父は、ものすごくつらい声で言うた。

「ああなさけない…きよひこが最初に再婚した時からとし子さんの時まで…どうしてお嫁さんにきつい暴力を加えたのか…4度目の時は、嫁さんが亡くなったのでケーサツ沙汰になったことを忘れたのか!?あの時、弁護士さんがお前のためにどれだけ走り回ったと思っているのだ…もういい…とし子さんの実家の親類縁者を呼び出して、とし子さんを引き取ってもらうしかない…」

義父はこう言った後、大きくため息ついた。

あいつが4度目のお嫁さんと再婚した時に、お嫁さんが死亡したことを聞いた。

もしかしたら、アタシにも身の危険が及ぶかもしれない…

より強い危機感を募らせたアタシは、家出を決行すると訣意《けつい》した。
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