【一気読み改訂版】とし子の悲劇
【第12話】
７月６日の朝７時過ぎであった。
場所は、家のダイニングテーブルにて…
テーブルの上には、白いごはんとみそしるとアジの開きときんぴらごぼうとひじきが置かれている。
テーブルの真ん中にはたくあん漬けが盛られている大皿が置かれている。
食卓には、アタシとダンナと義父母と義姉《あね》の５人がいた。
読みかけの中国新聞をひざの上に置いた義父は、にこやかな声で義母に言うた。
「そうだ、矢掛町(岡山県)のマスザキさんの家の長男さんが先月の大安吉日《だいあんきちじつ》の日曜日に（恋人）さんにプロポーズをして、（恋人）さんからＯＫもらったよ。」
「あらまあ、おめでたいわねぇ…マスザキさんの長男さんは36歳よね…やっとマスザキさんの家に春が来たので、ご夫婦も大喜びねぇ。」
「そうだな…お祝いをいつもより多くふんぱつしようか？」
「そうねえ…」
このあと、義母は深刻な声で義父に言うた。
「マスザキさんの長男さんのプロポーズ祝いもいいけど、ひなこの結婚はどうするのよ？」
義母が義姉《あね》の結婚問題を持ち出したので、義父が激怒した。
「またひなこの話か!!」
フンガイした義父は、読みかけの新聞に手を取りながら『めんどくさい!!』と言うたあと新聞を読み始めた。
義父は、新聞を読みながら『なでしこジャパンは勝ったかなァ…今日のカープの先発は…サンフレッチェはホームゲームだったかな…』などとのんきな声で言うた。
義母は、煮え切らない声で義父に言うた。
「あなた!!サッカーやプロ野球の心配をするヒマがあるのだったら、ひなこの問題を真剣に考えてよ!!」
「ひなこの問題を持ち込むなと言うただろ!!」
「あなた!!ひなこをいつまで独り身にさせておくのよ!?」
「ひなこがほしい白馬の王子さまは待っていれば来るから動くなと言うただろ!!」
「それじゃあ、ひなこにはおむこさんは必要ないと言うことね!!よくわかりました!!」
激怒した義母は、席をけとばしたあと食卓から離れた。
ワシは、朝の忙しい時間帯だからあとにしてくれと言うただけなのに…
なんで分かってくれんのぞぉ…
話し合いの時間は作るといよんぞぉ…
それをおまえらが『あとであとで…』と言うて逃げよるじゃないか…
義父は、新聞を読みながらひねていた。
食事を終えたダンナは『帰りは遅くなるから。』と突き放すような声で義父に言うた後、黒の手提げかばんとジャケットを持って工場へ出勤した。
続いて、アタシも赤茶色のバッグを持って家を出た。
義姉《あね》は『おいしくないわ!!』と怒って、朝ごはんを床にぶちまげたあと食卓から出た。
義姉《あね》の結婚問題が日増しに深刻になった。
それなのに、義父母は『めんどくさい…』と言うて逃げていた。
そんな中で暮らして行くのは、ショージキしんどい…
アタシは、早いうちからダンナとリコンすることを考え始めた。
2015年７月10日のことであった。
前夜に降った大雨が明け方にあがった。
この日は、朝から雲ひとつない快晴であった。
天気予報によると、西日本のところによっては日中の予想最高気温は40度近くまで上がる…と伝えられた。
この日九州と四国は梅雨明けが発表されたが（山口県をのぞく）中国地方はまだ梅雨明けの発表はなかった。
それなのに、この蒸し暑さはなんなのよ…
ところ変わって、岡山県井原市西江原町にあるアパートの敷地内にて…
むし暑さに耐えることができずに、少しでも涼しくしようと水まきをしているの主婦たち…
近所の公園で元気に遊んでいる子供たち…
いつもと変わらぬ午後の風景であった。
その中であった。
はでなシャツとだぼだぼのデニムパンツを着て、サングラスをかけている義弟《おとうと》がふらりとやって来た。
義弟《おとうと》は、アパートに残したわが子のようすを見るためにここに戻ってきた…と思う。
のんきにくちぶえをふきながら戻ってきた義弟《おとうと》は、玄関のドアを開けようとした。
その時であった。
部屋の中からわが子のかぼそい声が聞こえた。
それを聞いた義弟《おとうと》は、カギをあける右手がこおりついた。
（チャリーン）
そのはずみで、部屋のカギが地面《じべた》に落ちた。
「おとーさん…おとーさん…お腹がすいたよぉ…カレーライスが食べたい…ハンバーグが食べたい…おかーさんに会いたいよぉ…」
わが子のかぼそい声を聞いた義弟《おとうと》は、奇声《きせい》をあげながら足早に逃げた。
この時、あいつ（以後、ダンナはあいつと表記する）の家庭が少しずつかたむきだした。
その日の夜であった。
あいつは『会社の関係者30人と居酒屋でパーティーをするから、今夜は遅くなる…』と家に電話で伝えた。
アタシも『夜のバイトがあるから晩ごはんはいらない…』と家に電話した。
晩ごはんは、義父母と義姉《あね》だけで摂った。
時計のはりは、深夜０時に10分前になった。
あいつは、家に『（一番下の後輩）がガールズバーに行きたいと言うたけん、少し帰る時間がずれる…』と電話をかけた。
家にいる義父は、受話器の向こうにいるあいつに『バカもの!!帰ってこい!!お母さんが心細い心細いといよんのがきこえんのか!?』と怒鳴りつけたあと、ガチャーンと電話を切った。
そのあと、義父は『まともな仕事もせずにろくでもないやつだ!!』と言うてプリプリとはぶて(怒り)まくった。
そんな中であった。
アタシは、赤茶色のバッグとフジグランで買うたキリン氷結(缶チューハイ)の500ミリリットル缶３缶と激辛スナック菓子が入っているレジ袋を持って帰ってきた。
アタシが帰ってくるなり義父は『遅い!!』と怒鳴りつけた。
怒鳴られたアタシは、義父に怒鳴り返した。
「はぐいたらしいわねクソバカシュウト!!あんたのクソバカセガレにウソつかれたけん、足りない分を必死になって稼いでいることをなんで分かってくれんのよ!?」
「何だその言い方は!?章介《しょうすけ》も午前様なら!!としこさんも午前様か!?何のために章介《しょうすけ》と結婚したのだ!?」
義父の言葉に思い切りブチキレたアタシは、キリン氷結の500ミリリットル缶が入ったレジ袋を投げつけたあと、よりし烈な怒鳴り声をあげた。
「ますますはぐいたらしいわね!!アタシにいちゃもんつける気!?」
「キサマは、家の主にたてつくのか!?」
「あんたがアタシにゴロ（けんか）売ったんでしょ!!売られたゴロは買うわよ!!」
し烈な怒鳴り声でイカクしたアタシは、ものすごい怒りを込めてぶるぶると震わせながらするどい目つきで義父をにらみつけた。
真っ赤に充血しているアタシの目から、真っ赤な血で汚れた涙がたくさんこぼれた。
義父は『何だその態度は!!嫁のブンザイで家主に対してたてつくとは何ごとだ!?』と言うてアタシを怒った。
ふざけんじゃないわよ…
怒りに震えていたアタシは、義父に背中《せな》を向けた。
その後、着ていた白のブラウスを脱いだ。
ブラウスの下は、黒のＴシャツを着ていた。
義父は『なにをする気だ!?』と怒った。
アタシは、震える声で義父に言うた。
「ふざけんなよクソバカシュウト!!アタシが怒ったらどうなるのか教えてあげるからカクゴしなさい!!」
アタシは、黒のＴシャツを脱いだ。
Ｔシャツの中から、黒のユニクロエアリズムＶネックブラキャミがあらわになった。
つづいて、ブラキャミのストラップを外して、ブラキャミを下にずらした。
「何するのだ!?」
義父は、アタシにやめろと言うた。
しかし、次の瞬間…
ブラキャミの中から、背中に彫られていた恐ろしいはんにゃの刺青《すみ》があらわになった。
「ヒィィィィィィ…」
アタシの背中に彫られている刺青《すみ》をみた義父は、悲鳴をあげた。
義父を刺青《すみ》でイカクしたアタシは、前を向いた。
アタシは、より恐ろしい目つきで義父をイカクしながら迫った。
Ｇカップのふくよか過ぎる乳房があらわになっていた。
アタシは、近くにあった鉄パイプを手にしたあと、ワナワナと震えながら義父に迫った。
「あんたこそ何よ!?義姉《あね》が結婚できんことや義弟《おとうと》のデキ婚にはぶてているだけじゃないのよ!!それって全部アタシが悪いと言いたいのね!!アタシはあんたのクソッタレのセガレと結婚したくなかったのよ!!あんたたちが『心細い心細い…』と言うから、仕方なくこの家に嫁いだだけよ!!アタシにいちゃもんつけたから、ぶっ殺してやる!!」
このあと、アタシと義父はドカバキの大ゲンカを起こした…
アタシは、義父の頭をもので殴った…
義父は、仕返しにアタシの顔を平手打ちで思い切りたたいた。
ドカバキの大ゲンカは、近所にも響いた。
近所の住民は『章介《しょうすけ》さんの家はどうしておそろしい嫁さんしか来ないのかしらねぇ…』とヒソヒソと話していた。
そして、７月11日の午後１時前のことであった。
岡山県井原市西江原町のアパートで、深刻な事件が発生した。
現場に、岡山県警《けんけい》のパトカー20台がけたたましいサイレンを鳴らして入った。
義弟《おとうと》が、アパートの部屋で21歳の女性にするどい刃物をつきつけて、部屋に立てこもった。
立てこもり事件を起こした義弟《おとうと》は、警察に対してカレシを連れてこいと要求した。
人質になっている21歳の女性は、義弟《おとうと》が好きだったカノジョに新しくできたカレシの妹であった。
カノジョを取られたことに腹を立てた義弟《おとうと》は、カレシの妹に刃物を突きつけていた。
警察は、速やかに人質を解放しなさいと言うた。
しかし、義弟《おとうと》は『爆弾でアパートを爆破してやる!!』と大声をあげてわめき散らした。
事件発生から約11時間後のことであった。
事件現場に、岡山県警《けんけい》のＳＡＴが到着した。
岡山県警《けんけいほんぶ》は、ＳＡＴに対して『容疑者を排除《ハイジョ》せよ!!』と命令した。
ＳＡＴが到着してから10分後であった。
「おにーちゃーん!!助けて!!ギャー!!ギャー!!」
部屋の中で、カレシの妹の叫び声が聞こえた。
この時、ＳＡＴが叫び声をあげながら部屋になだれ込んだ。
人質になっていた21歳の女性が義弟《おとうと》にするどい刃物で一撃を喰らったあと亡くなった。
義弟《おとうと》は、突入してきたＳＡＴの隊員たちに刃物をふりまわして暴れていた。
その中で、ＳＡＴの隊員たちは義弟《おとうと》を取り押さえた。
そして、ＳＡＴの隊員たちに引っぱりだされた義弟《おとうと》は、用意された大きな棒にくくりつけられた。
その様子がテレビの生中継で映っていた。
「容疑者排除《ハイジョ》!!」
次の瞬間…
(ズダダダダダダダタ!!ズダダダダダダダタ!!)
義弟《おとうと》は、ＳＡＴの隊員たちのマシンガンで射殺された。
テレビの画面に、射殺された義弟《おとうと》のブザマな姿のがデカデカと映った。
それをみた義姉《あね》は、し烈な声をあげて泣き叫んだ。
ＳＡＴの隊員たちは、義弟の遺体が包まれているシートをぶら下げながら地区内をどうどうと行進した。
地区の住民たちは、ＳＡＴの隊員たちにはくしゅを送った。
事件解決から８時間後であった。
岡山県警《けんけい》の捜査員たちが、義弟《おとうと》が暮らしていた部屋の捜索《がさいれ》を始めた。
この時であった。
義弟《おとうと》のお子さまが、力尽きた姿で倒れていたのを捜査員たちに発見された。
義弟《おとうと》は、人質立てこもり事件に加えて児童保護義務放棄の罪と暴対法にテイショクする違反などで、岡山地検《ちけん》に書類送検《ソーケン》された。
義弟《おとうと》のせいで、あいつは職場でいびつなパワハラを受けるようになった。
あいつは、そのことが原因で家に帰ってくるたび大声で怒鳴り散らした。
ガマンの限度が来たアタシは、あいつに八つ当たりをするようになった。
「あんたね!!職場でいびつなパワハラを受けていることに腹を立てて、上司の机に握りこぶしを作って思い切り叩いて、職場でめちゃめちゃに暴れて職場放棄したって本当なの!?明日からどうするのよ!?」
「そんなことは考えてない!!定時制高校《ていじ》に入学した時から20年間文句も言わずに働き続けた…それなのに、けいすけが起こした立てこもり事件のせいで何もかもパーになった…若造《クソナマイキなれんちゅう》をどついて職場を棄《す》てた!!…と言うことで、明日から頼むよ…」
「キーッ!!もうガマンの限界よ!!アタシはあんたの妻とこの家の嫁をやめるわよ!!」
「ジョートーだ!!殴らせろ!!」
(ガツーン!!)
あいつは、アタシの顔をグーで思い切り殴つけた。
アタシは、震える右足であいつのマタクラを思い切りけり返した。
（ガーン!!ガーン!!）
「何しやがる!?」
「あんたがアタシをグーで殴ったから仕返しよ!!」
アタシとあいつは、家の中で大声をはりあげながら暴れ回った。
その翌朝、アタシはあいつの家から飛び出した。
この一件で、アタシはあいつの家との関係が気まずくなった。
場所は、家のダイニングテーブルにて…
テーブルの上には、白いごはんとみそしるとアジの開きときんぴらごぼうとひじきが置かれている。
テーブルの真ん中にはたくあん漬けが盛られている大皿が置かれている。
食卓には、アタシとダンナと義父母と義姉《あね》の５人がいた。
読みかけの中国新聞をひざの上に置いた義父は、にこやかな声で義母に言うた。
「そうだ、矢掛町(岡山県)のマスザキさんの家の長男さんが先月の大安吉日《だいあんきちじつ》の日曜日に（恋人）さんにプロポーズをして、（恋人）さんからＯＫもらったよ。」
「あらまあ、おめでたいわねぇ…マスザキさんの長男さんは36歳よね…やっとマスザキさんの家に春が来たので、ご夫婦も大喜びねぇ。」
「そうだな…お祝いをいつもより多くふんぱつしようか？」
「そうねえ…」
このあと、義母は深刻な声で義父に言うた。
「マスザキさんの長男さんのプロポーズ祝いもいいけど、ひなこの結婚はどうするのよ？」
義母が義姉《あね》の結婚問題を持ち出したので、義父が激怒した。
「またひなこの話か!!」
フンガイした義父は、読みかけの新聞に手を取りながら『めんどくさい!!』と言うたあと新聞を読み始めた。
義父は、新聞を読みながら『なでしこジャパンは勝ったかなァ…今日のカープの先発は…サンフレッチェはホームゲームだったかな…』などとのんきな声で言うた。
義母は、煮え切らない声で義父に言うた。
「あなた!!サッカーやプロ野球の心配をするヒマがあるのだったら、ひなこの問題を真剣に考えてよ!!」
「ひなこの問題を持ち込むなと言うただろ!!」
「あなた!!ひなこをいつまで独り身にさせておくのよ!?」
「ひなこがほしい白馬の王子さまは待っていれば来るから動くなと言うただろ!!」
「それじゃあ、ひなこにはおむこさんは必要ないと言うことね!!よくわかりました!!」
激怒した義母は、席をけとばしたあと食卓から離れた。
ワシは、朝の忙しい時間帯だからあとにしてくれと言うただけなのに…
なんで分かってくれんのぞぉ…
話し合いの時間は作るといよんぞぉ…
それをおまえらが『あとであとで…』と言うて逃げよるじゃないか…
義父は、新聞を読みながらひねていた。
食事を終えたダンナは『帰りは遅くなるから。』と突き放すような声で義父に言うた後、黒の手提げかばんとジャケットを持って工場へ出勤した。
続いて、アタシも赤茶色のバッグを持って家を出た。
義姉《あね》は『おいしくないわ!!』と怒って、朝ごはんを床にぶちまげたあと食卓から出た。
義姉《あね》の結婚問題が日増しに深刻になった。
それなのに、義父母は『めんどくさい…』と言うて逃げていた。
そんな中で暮らして行くのは、ショージキしんどい…
アタシは、早いうちからダンナとリコンすることを考え始めた。
2015年７月10日のことであった。
前夜に降った大雨が明け方にあがった。
この日は、朝から雲ひとつない快晴であった。
天気予報によると、西日本のところによっては日中の予想最高気温は40度近くまで上がる…と伝えられた。
この日九州と四国は梅雨明けが発表されたが（山口県をのぞく）中国地方はまだ梅雨明けの発表はなかった。
それなのに、この蒸し暑さはなんなのよ…
ところ変わって、岡山県井原市西江原町にあるアパートの敷地内にて…
むし暑さに耐えることができずに、少しでも涼しくしようと水まきをしているの主婦たち…
近所の公園で元気に遊んでいる子供たち…
いつもと変わらぬ午後の風景であった。
その中であった。
はでなシャツとだぼだぼのデニムパンツを着て、サングラスをかけている義弟《おとうと》がふらりとやって来た。
義弟《おとうと》は、アパートに残したわが子のようすを見るためにここに戻ってきた…と思う。
のんきにくちぶえをふきながら戻ってきた義弟《おとうと》は、玄関のドアを開けようとした。
その時であった。
部屋の中からわが子のかぼそい声が聞こえた。
それを聞いた義弟《おとうと》は、カギをあける右手がこおりついた。
（チャリーン）
そのはずみで、部屋のカギが地面《じべた》に落ちた。
「おとーさん…おとーさん…お腹がすいたよぉ…カレーライスが食べたい…ハンバーグが食べたい…おかーさんに会いたいよぉ…」
わが子のかぼそい声を聞いた義弟《おとうと》は、奇声《きせい》をあげながら足早に逃げた。
この時、あいつ（以後、ダンナはあいつと表記する）の家庭が少しずつかたむきだした。
その日の夜であった。
あいつは『会社の関係者30人と居酒屋でパーティーをするから、今夜は遅くなる…』と家に電話で伝えた。
アタシも『夜のバイトがあるから晩ごはんはいらない…』と家に電話した。
晩ごはんは、義父母と義姉《あね》だけで摂った。
時計のはりは、深夜０時に10分前になった。
あいつは、家に『（一番下の後輩）がガールズバーに行きたいと言うたけん、少し帰る時間がずれる…』と電話をかけた。
家にいる義父は、受話器の向こうにいるあいつに『バカもの!!帰ってこい!!お母さんが心細い心細いといよんのがきこえんのか!?』と怒鳴りつけたあと、ガチャーンと電話を切った。
そのあと、義父は『まともな仕事もせずにろくでもないやつだ!!』と言うてプリプリとはぶて(怒り)まくった。
そんな中であった。
アタシは、赤茶色のバッグとフジグランで買うたキリン氷結(缶チューハイ)の500ミリリットル缶３缶と激辛スナック菓子が入っているレジ袋を持って帰ってきた。
アタシが帰ってくるなり義父は『遅い!!』と怒鳴りつけた。
怒鳴られたアタシは、義父に怒鳴り返した。
「はぐいたらしいわねクソバカシュウト!!あんたのクソバカセガレにウソつかれたけん、足りない分を必死になって稼いでいることをなんで分かってくれんのよ!?」
「何だその言い方は!?章介《しょうすけ》も午前様なら!!としこさんも午前様か!?何のために章介《しょうすけ》と結婚したのだ!?」
義父の言葉に思い切りブチキレたアタシは、キリン氷結の500ミリリットル缶が入ったレジ袋を投げつけたあと、よりし烈な怒鳴り声をあげた。
「ますますはぐいたらしいわね!!アタシにいちゃもんつける気!?」
「キサマは、家の主にたてつくのか!?」
「あんたがアタシにゴロ（けんか）売ったんでしょ!!売られたゴロは買うわよ!!」
し烈な怒鳴り声でイカクしたアタシは、ものすごい怒りを込めてぶるぶると震わせながらするどい目つきで義父をにらみつけた。
真っ赤に充血しているアタシの目から、真っ赤な血で汚れた涙がたくさんこぼれた。
義父は『何だその態度は!!嫁のブンザイで家主に対してたてつくとは何ごとだ!?』と言うてアタシを怒った。
ふざけんじゃないわよ…
怒りに震えていたアタシは、義父に背中《せな》を向けた。
その後、着ていた白のブラウスを脱いだ。
ブラウスの下は、黒のＴシャツを着ていた。
義父は『なにをする気だ!?』と怒った。
アタシは、震える声で義父に言うた。
「ふざけんなよクソバカシュウト!!アタシが怒ったらどうなるのか教えてあげるからカクゴしなさい!!」
アタシは、黒のＴシャツを脱いだ。
Ｔシャツの中から、黒のユニクロエアリズムＶネックブラキャミがあらわになった。
つづいて、ブラキャミのストラップを外して、ブラキャミを下にずらした。
「何するのだ!?」
義父は、アタシにやめろと言うた。
しかし、次の瞬間…
ブラキャミの中から、背中に彫られていた恐ろしいはんにゃの刺青《すみ》があらわになった。
「ヒィィィィィィ…」
アタシの背中に彫られている刺青《すみ》をみた義父は、悲鳴をあげた。
義父を刺青《すみ》でイカクしたアタシは、前を向いた。
アタシは、より恐ろしい目つきで義父をイカクしながら迫った。
Ｇカップのふくよか過ぎる乳房があらわになっていた。
アタシは、近くにあった鉄パイプを手にしたあと、ワナワナと震えながら義父に迫った。
「あんたこそ何よ!?義姉《あね》が結婚できんことや義弟《おとうと》のデキ婚にはぶてているだけじゃないのよ!!それって全部アタシが悪いと言いたいのね!!アタシはあんたのクソッタレのセガレと結婚したくなかったのよ!!あんたたちが『心細い心細い…』と言うから、仕方なくこの家に嫁いだだけよ!!アタシにいちゃもんつけたから、ぶっ殺してやる!!」
このあと、アタシと義父はドカバキの大ゲンカを起こした…
アタシは、義父の頭をもので殴った…
義父は、仕返しにアタシの顔を平手打ちで思い切りたたいた。
ドカバキの大ゲンカは、近所にも響いた。
近所の住民は『章介《しょうすけ》さんの家はどうしておそろしい嫁さんしか来ないのかしらねぇ…』とヒソヒソと話していた。
そして、７月11日の午後１時前のことであった。
岡山県井原市西江原町のアパートで、深刻な事件が発生した。
現場に、岡山県警《けんけい》のパトカー20台がけたたましいサイレンを鳴らして入った。
義弟《おとうと》が、アパートの部屋で21歳の女性にするどい刃物をつきつけて、部屋に立てこもった。
立てこもり事件を起こした義弟《おとうと》は、警察に対してカレシを連れてこいと要求した。
人質になっている21歳の女性は、義弟《おとうと》が好きだったカノジョに新しくできたカレシの妹であった。
カノジョを取られたことに腹を立てた義弟《おとうと》は、カレシの妹に刃物を突きつけていた。
警察は、速やかに人質を解放しなさいと言うた。
しかし、義弟《おとうと》は『爆弾でアパートを爆破してやる!!』と大声をあげてわめき散らした。
事件発生から約11時間後のことであった。
事件現場に、岡山県警《けんけい》のＳＡＴが到着した。
岡山県警《けんけいほんぶ》は、ＳＡＴに対して『容疑者を排除《ハイジョ》せよ!!』と命令した。
ＳＡＴが到着してから10分後であった。
「おにーちゃーん!!助けて!!ギャー!!ギャー!!」
部屋の中で、カレシの妹の叫び声が聞こえた。
この時、ＳＡＴが叫び声をあげながら部屋になだれ込んだ。
人質になっていた21歳の女性が義弟《おとうと》にするどい刃物で一撃を喰らったあと亡くなった。
義弟《おとうと》は、突入してきたＳＡＴの隊員たちに刃物をふりまわして暴れていた。
その中で、ＳＡＴの隊員たちは義弟《おとうと》を取り押さえた。
そして、ＳＡＴの隊員たちに引っぱりだされた義弟《おとうと》は、用意された大きな棒にくくりつけられた。
その様子がテレビの生中継で映っていた。
「容疑者排除《ハイジョ》!!」
次の瞬間…
(ズダダダダダダダタ!!ズダダダダダダダタ!!)
義弟《おとうと》は、ＳＡＴの隊員たちのマシンガンで射殺された。
テレビの画面に、射殺された義弟《おとうと》のブザマな姿のがデカデカと映った。
それをみた義姉《あね》は、し烈な声をあげて泣き叫んだ。
ＳＡＴの隊員たちは、義弟の遺体が包まれているシートをぶら下げながら地区内をどうどうと行進した。
地区の住民たちは、ＳＡＴの隊員たちにはくしゅを送った。
事件解決から８時間後であった。
岡山県警《けんけい》の捜査員たちが、義弟《おとうと》が暮らしていた部屋の捜索《がさいれ》を始めた。
この時であった。
義弟《おとうと》のお子さまが、力尽きた姿で倒れていたのを捜査員たちに発見された。
義弟《おとうと》は、人質立てこもり事件に加えて児童保護義務放棄の罪と暴対法にテイショクする違反などで、岡山地検《ちけん》に書類送検《ソーケン》された。
義弟《おとうと》のせいで、あいつは職場でいびつなパワハラを受けるようになった。
あいつは、そのことが原因で家に帰ってくるたび大声で怒鳴り散らした。
ガマンの限度が来たアタシは、あいつに八つ当たりをするようになった。
「あんたね!!職場でいびつなパワハラを受けていることに腹を立てて、上司の机に握りこぶしを作って思い切り叩いて、職場でめちゃめちゃに暴れて職場放棄したって本当なの!?明日からどうするのよ!?」
「そんなことは考えてない!!定時制高校《ていじ》に入学した時から20年間文句も言わずに働き続けた…それなのに、けいすけが起こした立てこもり事件のせいで何もかもパーになった…若造《クソナマイキなれんちゅう》をどついて職場を棄《す》てた!!…と言うことで、明日から頼むよ…」
「キーッ!!もうガマンの限界よ!!アタシはあんたの妻とこの家の嫁をやめるわよ!!」
「ジョートーだ!!殴らせろ!!」
(ガツーン!!)
あいつは、アタシの顔をグーで思い切り殴つけた。
アタシは、震える右足であいつのマタクラを思い切りけり返した。
（ガーン!!ガーン!!）
「何しやがる!?」
「あんたがアタシをグーで殴ったから仕返しよ!!」
アタシとあいつは、家の中で大声をはりあげながら暴れ回った。
その翌朝、アタシはあいつの家から飛び出した。
この一件で、アタシはあいつの家との関係が気まずくなった。
