【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第27話】

翌朝のことであった。

あいつの嫁の遺体が香川と徳島の県境付近にある山奥で発見されたニュースが入った

香川・徳島の2つの県警《けんけい》は、合同捜査本部を立ち上げて捜査を始めた。

今のところ、容疑者に結びつく手がかりはなかった。

この時、キンリンの住民たちが家の家族に強い不信感を抱くようになった。

それが原因で、義弟《おとうと》は勤めを休んだ。

8月25日頃の昼過ぎであった。

アタシは、赤茶色のバッグを持って円座町《えんざ》の近辺にやって来た。

この時、あいつの家の玄関に『忌中《もちゅう》』のステッカーが貼られていた。

アタシは、近くにいた奥さまに事情を聞いた。

「あのー。」
「何でしょうか?」
「こちらの家は、家族のどなたが亡くなられたのですか?」
「ひろむさんの新しいお嫁さんが殺されたのよ…あんた知らなかったの!?」
「いえ。」
「…と言うよりも…あの家の人間が殺したと思うわよ!!」
「えっ?」
「うちね…あの日の夜…ひろかずの両親とひろかずが家からビニールシートでおおわれたひろむさんのお嫁さんの遺体を運び出していたところをケータイの動画で撮影したわよ!!近いうちに動画をテレビ局へ送ろうと思っていたところよ!!」

どうしてそんな恐ろしいことをするのよ…

近所の奥さまは、アタシにこう言い放った。

「ひろかずの両親は、ひろかずが警察に逮捕されるのがイヤだからあれこれとインペイ工作したのよ!!」
「インペイ工作!?」
「ひろかずの父親が知人が香川県警《けんけい》の捜査1課長にたのんでひろかずを逮捕しないでくれと頼んだのよ!!…ひろかずの父親は、捜査一課長にカネを握らせたのよ!!」
「奥さま…」
「絶対にありうるわ!!」

奥さまは、あいつの離婚歴をアタシに暴露した。

「あとね、ひろむの離婚歴についても…うちは知ってるのよ…最初の嫁さんは交通事故で亡くなったと聞いたけど、それは大ウソよ…実を言うと、ひろむは家のガレージで…最初のお嫁さんを車でひいて殺したのよ…その際にも両親がインペイ工作をしたのよ!!ひろむはこの時、済生会病院《さいせいかい》の役員を務めていた…自分のお嫁さんを車でひいて死なせたことが発覚するのが怖いから…両親があちらこちらに働きかけたのよ…ここだけの話だけど…最初のお嫁さんにはね…死亡時に支払われる1億円の生命保険に加入していたのよ…」
「まさか…保険金が目当てだったとか…」
「そう言わざるをえないわね…ひろむの家は上級国民《ジョーキュー》だから自己チューになったのよ…他にもひろむは、ヤーサンともめた際に刃物でヤーサン殺していたのよ…あとね…城東町のヘルス(風俗店)で店の女の子に本番行為《ほんばん》を強要した…だからたったひとりの娘さんを殺されたのよ…だから天バツを喰らったのよ…いいきみだわ…おーほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっ…おーほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっ…」

近所の奥さまは、より強烈な高嗤《タカビーわら》いでアタシをイカクした。

奥さまからことの次第を聞いたアタシは『クソッタレの家の親類縁者を血の池地獄へ墜《お》としてやる!!』と怒り狂った。
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