【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第6話】

話は、5話のおわりのところから始まる。

義弟《おとうと》は、グチョグチョに汚れたアタシの姿をスマホのカメラで撮影した。

アタシは、義弟《おとうと》から『人にチクったら、あんたのあられもない姿をネットにばらまくぞ!!』とおどされた。

くやしい…

すごくくやしい…

義弟《おとうと》に犯された日を境に、家族の関係は極力悪化した。

義弟《おとうと》は、1日中遊び回るようになった。

重度のキッチンドリンカーにおちいった義父は、朝から晩まで大量に酒をのんでワケの分からん言葉をグダグダグダグダ言いまくっていた…

義兄《あに》は、西条市大町《しないおおまち》の酒場街でひと晩中ハシゴするようになった。

義兄《あに》が帰宅するのは明け方の5時くらいであった。

あいつも家出して行方不明になった。

その一方で、義父が保証人になっている友人の借金の問題が放置されていた。

担当の弁護士さんに相談したあと支払い免除などの手続きを取った…

けれど、弁護士さんの返事まちの状態がつづいているのでどうすることもできない。

こんなことになるのであれば、結婚なんかするんじゃなかった…

武方《たけかた》さんのクチに乗って、あいつとお見合いして結婚したから大失敗したわ…

時は、8月2日の昼過ぎであった。

この日、義兄《あに》の職場は正午で仕事が終わった。

午後からは会社の行事ごとの関係で半ドンであった。

しかし、義兄《あに》は参加を拒否してそのまま帰宅した。

義兄《あに》は、昼1時半頃に帰宅した。

アタシは、夜7時からデリヘル店へ出勤する予定であった。

義弟《おとうと》は、あの日の夜以降家に帰らなくなった。

義父は、ものすごく危険な状態におちいった。

そんな中で、帰宅した義兄《あに》はものすごくしんどい表情を浮かべていた。

「もうしんどい…酒…」

義兄《あに》は、冷蔵庫の中からアサヒスーパードライの500ミリリットル缶3本と亀田の柿の種(ツマミ)を取り出したあと、テレビが置かれている広間へ行った。

疲れた表情を浮かべている義兄《あに》は、テレビを見ながらビールをゴクゴクとのんでいた。

アタシは、やさしい声で義兄《あに》に声をかけた。

「義兄《にい》さん。」
「なんぞぉ!!」
「今日は、早く終わったのね。」
「ああ、そうだよ!!」

この時、義兄《あに》の顔はものすごく真っ赤になっていた。

テレビの画面に、テレビ愛媛のふるさとバラエティ番組の今治の市民のお祭り『おんまく』の特別生番組が映っていた。

アタシは、義兄《あに》に『職場は午後からおんまく祭りに行く行事があったのね…』と言おうとしたけど、義兄《あに》がこわいので言えなかった。

それでも、アタシは義兄《あに》に優しく声をかけた。

「義兄《にい》さん…今日は8月の第1土曜日よね…今日と明日は、今治市民のお祭り『おんまく』の日よね…」

アタシは義兄《あに》やさしく言うたのに、義兄《あに》は思い切りブチ切れた。

思い切りブチ切れた義兄《あに》は、テレビを地デジからBSデジタルにモードを変えたあと音量を最大値にあげた。

テレビの画面は、BSフジで再放送されている昔の東海テレビ制作の昼ドラのレイプシーンに変わった。

ドラマの主演の大河内奈々子さんの強烈な叫び声と布が思い切り破れる音が響いた。

し烈なレイプシーンを見たアタシは、その場に座り込んで震えまくった。

その後、義兄《あに》は適度の音量に戻したあと電源を切った。

(ブチッ…)

アタシをイカクした義兄《あに》は『テレビなんかおもろないわボケ!!』と言うたあと、にぎりこぶしを作ってテーブルをドスーンと叩いた。

その後、のみかけのビールと未開封の缶をあけて一気にゴクゴクとのみほした。

アタシはこの時、丹原町《たんばら》で発生した母子殺人事件をまた思い出した。

こわい…

ものすごくこわい…

その時であった。

(ジリリリン…ジリリリン…ジリリリン)

この時、うぐいす色のプッシュホンのベルが鳴った。

アタシは、電話に出た。

電話は武方《たけかた》さんからであった。

アタシは、にこやかな表情で応対した。

「はいもしもし…あっ、武方《たけかた》さんでございますね…いつも義兄《あに》に優しくしていただいてありがとうございます。」

アタシは、電話口にいる武方《たけかた》さんに『義兄《あに》に代わりましょうか?』と言うたあと義兄《あに》を呼んだ。

「義兄《にい》さん、武方《たけかた》さんから電話よ。」
「何だよぉ…オレは眠いのだよぉ…」
「武方《たけかた》さんが義兄《にい》さんのことを心配して電話して来て下さったのよ…きょうは未婚の男性の従業員さんと新居浜の信金の女性の職員さん20人とのお見合いイベントで…」
「ワーッ!!」

(ガシャーン!!ガシャーン!!ガシャーン!!)

アタシが言うた言葉を聞いた義兄《あに》は、思い切りブチ切れた。

思い切りブチ切れた義兄《あに》は、金属バットでプッシュホンを叩いて粉々に壊した。

アタシは、泣き叫ぶ声で義兄《あに》に言うた。

「義兄《にい》さん!!どうしてひどいことをするのよ!!」
「やかましい!!武方《クソバカヤロウ》のせいで、オレの人生がワヤになった!!武方《むしケラやろう》に言うとけ!!ぶっ殺してやると言うとけ!!」

し烈な怒鳴り声でアタシをイカクした義兄《あに》は、千鳥足《ふらついたあしどり》で外へ飛び出した。

義兄《あに》は…

何が気にいらないのか?

武方《たけかた》さんが提案したごほうびに不満があると思う…

それがよく分からないからものすごくこわい…
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