【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第95話】

さて、その頃であった。

朝まで残業していたあいつは、事務の女性から『ご自宅からお電話がありました…』と言う伝言が書かれていたメモ用紙を受けとった。

しかし、あいつは『後でかける…』と言うて放置した。

家が非常事態におちいってるのに…

あいつは会社の方が大事なのね…

時は、正午すぎであった。

ダンナは、職場の敷地内にある作業員さんたちの休憩室にいた。

あいつは、給与引きで注文したお弁当を食べていたが気分が悪いので多く残した。

そこへ、委託会社から派遣されていたそうじのおばちゃんがあいつのもとにやって来た。

そうじのおばちゃんは、ものすごくつらい声であいつに言うた。

「すみおさん…あんたはこのままでいいの？まさおさんは大学生活が楽しい楽しいと言うてるのに、ふじおさんは毎日がつまらないと言うていじけてる…それはどういうことか分かっているの!?」
｢よく、分からない…｣

煮えきらない表情を浮かべているあいつに対して、そうじのおばちゃんはあつかましい声で言うた。

｢すみおさん…口出しするようで悪いけれど、ふじおさんにハローワークの職場実習を経て就職する方法をすすめようかと思っているけど…」
「職場実習？」
「そうよ…この際だから言うけれども、家族の関係を一度リセットした方がいいと思うよ。｣
｢ハア～｣
｢ふじおさんの件については、アタシがハローワークに行って就職支援の申請をするけれど…かまん？」
「かまんって…何でおばちゃんがうちのふじおのことをとやかく言うのだ!?」
「言いたくもなるわよ!!あんたこの最近、仕事仕事と言うて逃げてばかりいるわよ!!」
「ふざけるな!!よくもひとの家庭にいちゃもんつけたな!!不愉快きわまりない!!」

そうじのおばちゃんを怒鳴りつけたあいつは、食べかけのお弁当をおばちゃんに投げつけたあと休憩室から出ていった。

あいつの無関心は、日増しに高まっていた。

もうそのうちに、取り返しのつかない非常事態が襲ってくると思う…

それでもあいつは無関心でいるつもりだから、アタシは一切関知しないわよ!!