* Snow gift *
 12月23日、午前10時10分。


 チャンスはそう何度もあるわけじゃない。

 そもそもそんなに何度もチャレンジするだけの勇気も気力も、ない。

(ダイジョウブダイジョウブダイジョウブダイジョウブダイジョウブ)

 呪文のように繰り返して自らを鼓舞するものの、オレの心は稀に見るチキンっぷり。

 気をしっかりもっていないと今すぐ教室の窓から飛び出しちまいそうだ。

 そもそも、だ。

 アイツが死ぬほど鈍感なのが悪い。

 こんなことはもう、我ながら今さらなんだ。

 オレの気持ちなんて周知のことで、気付いてないのは当の本人だけ。

 化学の実験で同じ班になれば(当然狙って)危険な作業の役はいつだって引き受けたし、掃除時間のゴミ捨ては代わってやってる。

 放課後の突然の雨の日は(常備してある)傘を貸してやったし、昼の購買じゃ揚げクリームパン争奪戦でごった返した肉の壁に弾かれてる所にさっそうと好物の生クリーム苺サンドを差し出してやったこともある。

 これで気付かないなんて、どこまで天然記念物なんだ?

 決戦の日はもう明日に迫っちまった。

“仲良しのクラスメイト”を卒業してハッピーデイを送るには今日しかない。

 問題があるとすれば──


 オレがつまり、うまく“告白”できるかどうかってことなんだ。
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