みかん白書~描きかけの私の描きかけの恋~
第4章「走れ、走れ」
「もしもしっ!?」


中学3年の夏休み第1日目。

その日の午前11時過ぎに鳴った自宅の固定電話を、ウチはワンコールで取った。

ちょうど妹の文(アヤ)からの電話を、今か今かと待ちわびてたさかいに。



今から4時間前の午前7時すぎ――



「アホっ!!!」


ウチのとどめのひとことで小6の妹は、わんわん泣き出してしもた。


その声を聞きつけて、目をまん丸くした父がDK(ダイニング・キッチン)に駆けつけてきはった。

「おいおい、どないしたんや?」

「文が友達ンちに“ミルク”を持っていって、どっかに逃げられてもうたんやて」


ミルクっていうんは、ウチが飼ってるペットのジャンガリアンハムスターの名前。

“ミルク”みたいに真っ白なハムスターやさかい、ウチがその名前をつけてん。

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