「お願い、田中君を止めないと!それに、暗殺されるかもしれないってわかってるのに、そのまま放ってなんておけないよ!」

ぐっとこぶしを握る。幸村は複雑そうな表情をしている。

「だが、玲子を1人で行かせるわけには!」

幸村の言い分ももっともだ。攫われるとわかっているのに、1人で出歩くなど、攫ってくれというようなものだ。

「…俺が一緒に、と言いたいところだが、お館様のそばを離れるわけにはいかない」

しばらくの沈黙の後、幸村は、ばん、とひざを叩き、顔を上げた。

「才蔵、玲子の警備にあたってくれないか?」

幸村は才蔵にそう言うと、才蔵は、はい、と頭を下げた。

「ゆっきー…」

玲子は幸村の方を見やる。目にはうっすらと涙がたまっていた。

「玲子、奴の所に行くのはかまわない。だが、必ず、生きて帰ってくると約束してくれ」

幸村の言葉に、思わず涙がつぅっと頬を伝った。

「約束、できるか?」

幸村の言葉に、ぎゅっと唇を結び、こくんと頷いた。

「必ず、帰ってきます。ごめん。ありがとう、ゆっきー」

その場に正座で座りなおし、両手を突いて、頭を深く下げた。


必ず、必ず。
政宗さんの暗殺も、私の誘拐も、阻止してみせる。

また、ゆっきーのもとに。

必ず、帰ってくるから。


顔を上げ、ぐいっと涙をぬぐうと、玲子はすっと立ち上がり、才蔵の方を向く。

「準備して、行きましょう、才蔵さん」

玲子は、ぎゅっとこぶしを強く握りなおした。