戦国遊戯
さて、これからどうしようかな。


とりあえず、城の前まできたものの、どうやって中に入るか考えていなかった。


宿でゆっくり考えててもよかったんだけど…ゆっきーや政宗が起きたら、絶対についていくって言いそうだし。


玲子はその場にしゃがみこみ、手をこすり合わせながら、ぼーっと地面を見つめた。

「玲子…か?」

名前を呼ばれて顔をふっと上げた。そこには、藤吉郎の姿があった。

「こんなところで、しかもそんな格好で何をしているんだ!体を壊すぞ!」

藤吉郎に腕をぐいっとひっぱられ、玲子は立ち上がった。

「とにかく、着替えを何か用意してやるからこっちにこい」

呆れた口調で言いながら、門番に門を開けさせた。藤吉郎は、玲子を連れて、城内の自室へと向かった。

「…お主、帰ったのではなかったのか?」

ぼそっと藤吉郎に聞かれて、玲子は首を横にふった。藤吉郎の部屋に着くまで、二人は黙ったままだった。

「ほれ、ついた」

部屋の中に案内すると、藤吉郎はごそごそと手ぬぐいを出してきて、玲子に渡した。

「とにかく、それで雨を拭いておれ。今、服を調達してきてやる」

そういうと、藤吉郎が部屋を出て行った。


ごめんね、藤吉郎さん。


藤吉郎の行為に、玲子はぺこっと頭を下げた。軽く体を拭く。が、雨を思いっきりすった着物が、べったりと体にまとわりついてくる。
髪を拭いていると、藤吉郎が部屋に戻ってきた。

「侍女たちの着ているもので申し訳ないが、濡れたままの着物を着ているよりはましだろう」

そういって、1枚の着物を差し出してきた。でも、と遠慮する玲子に、藤吉郎は、いいから!と押し付けた。

「わしは部屋の外で待っておる。早く着替えてしまえ」

そう言って、照れくさそうにしながら、部屋をまた出て行った。玲子は、藤吉郎の行為に甘えて、着物を着替えさせてもらった。
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