この世で一番大切なもの
第五章
俺が入店してから二ヶ月が経った。

俺は途方に暮れていた。

今だにちゃんとした客はいない。

給料も十万円ない。

そこからボロボロの狭い七人部屋での寮費と光熱費で五万円取られる。

遊ぶ金などはなかった。

ホストで大成功し、一攫千金の歌舞伎町ドリーム。

綺麗な女を連れまわし、高級マンションに住み、豪華な料理を毎日食う。

店には俺のナンバー写真が飾られ、他のホストから憧れの目で見られる。

だが実際はそんな甘い世界ではなかった。

夢は叶うはずもなく、その日食うのがやっとの痩せこけた俺がいた。

「三ヶ月の間に小計十万売らなきゃ、クビだから」

そう入店する時に言われた。

小計いうのは店へのサービス料などが抜かれた金額なので、実際金額的には現金十五万ぐらいが小計十万になる。

三ヶ月間のうち、どれか一月、女に十五万円以上使ってもらう。

このノルマは簡単そうで難しい。

単純に普通に考えて、ホストに十五万貢ぐだろうか・・。

答えはノー。

そんなに女は頭が悪くはない。

みんな金が大事なのだ。

そう簡単に貢ぎなどはしない。

ホストというのは、その常識を乗り越えなければならないのだ。













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